はじめに

2026年9月16日(水)の午後、ヨーロッパ上空を飛ぶ Galileo の運用衛星 5 機が、ふだん平文で流している信号の一部を 2 時間だけ暗号化しました。ノルウェー最北部の島 Andøya では、ちょうどその週に世界最大の公開 GNSS 妨害試験 Jammertest が開かれていて、会場の受信機と、オランダにある ESA の航法研究所 ESTEC の受信機が、この暗号化信号を使って自分の位置を確定しました。翌 17 日、ESA と European GNSS Service Centre(GSC)が「スプーフィング環境下で、民生受信機として初めて認証済みの測位が成立した」と発表しています。

GNSS の「認証」は、これまでも Galileo にありました。2025 年 7 月に運用宣言された OSNMA(Open Service Navigation Message Authentication)です。ただし OSNMA が保証するのは「衛星が送ってきた航法メッセージが本物か」までで、測位のもう一つの材料である「距離の測定(測距)」は守れません。今回試された SAS(Signal Authentication Service)は、この測距そのものを認証する仕組みで、両方がそろって初めて「計算された位置そのもの」に認証が付きます。GSC の表現を借りれば、「航法データと測距の両方を認証した信号を 4 機以上から同時に処理して位置を解いた、民生受信機として初めての例」です。

当サイトでは みちびき 7 号機の打ち上げで QZSS の「補完」と「補強」を整理しました。今回はその隣にある第 3 の軸、「その位置は信じてよいのか」の話です。筆者の手元に GNSS 受信機はなく、Andøya にも行っていません。ESA・GSC の発表、EU が公開している OSNMA の仕様書(ICD/SDD/Info Note)、Galileo の Service Notice、Jammertest の公式サイト、内閣府みちびき公式サイトと IS-QZSS-SAS 仕様書にある事実だけを使って図解します。

この記事では次の 6 点を扱います。

  1. 基礎 — ジャミングとスプーフィングの違い、「航法メッセージ」と「測距」という測位の 2 つの材料、OSNMA(TESLA の遅延鍵開示)と SAS(暗号化拡散符号)の役割分担、なぜ「測位が成立した」が初なのか
  2. 何が起きたか — OSNMA の運用開始から E6-C の暗号化試験、そして Jammertest での実地測位まで
  3. 仕組み — 受信機側に何が要るのか、鍵はどう配られるのか、認証はどれだけ遅れて届くのか
  4. 日本の読者への接続 — みちびきの「信号認証サービス」は何を認証していて、Galileo の二段構えとどこが違うか
  5. 手元の受信機で OSNMA を試す道筋(紹介のみ)
  6. 筆者の見方 — 自作の GNSS ロガーやドローンの位置を「信じてよい条件」がどう変わるか
⚠️ 出典と時点

本記事の事実・数値・衛星名は、ESA の発表(2026年9月17日)、GSC の発表(2026年9月17日・8月6日・7月27日)、Galileo Service Notice #21 Issue 1.1(2026年9月3日)、OSNMA SIS ICD v1.1(2023年10月)・SDD v1.0(2025年7月)・Info Note v1.0(2021年11月)、Jammertest 公式サイト、内閣府みちびき公式サイト、IS-QZSS-SAS-001(2024年5月27日)、galileo-osnma の README にあるものだけを使っています(いずれも 2026年9月19日に取得)。X(旧 Twitter)の投稿は出典に使っていません。SAS のインタフェース仕様書と受信機ガイドラインは本稿執筆時点で未公開のため、SAS の内部(暗号化方式の詳細・RECS のフォーマット)は GSC の説明文にある範囲でしか書いていません。筆者は GNSS 受信機を持っておらず、本記事に実機の出力は載せていません。

📌 この記事の3行まとめ
  • 2026年9月16日 14:00〜16:00 UTC、Galileo の E06・E21・E23・E34・E36 の 5 機が E6-C 信号(1278.75 MHz)の拡散符号を暗号化して送信。Andøya の Jammertest 会場と ESTEC の SAS 受信機が、OSNMA で認証した航法メッセージと SAS で認証した測距を 4 機以上から同時に得て、民生受信機として初の「認証済み測位」を成立させた。会場のスプーフィング試験では従来受信機が偽の位置に引きずられる一方、SAS 受信機は真の位置を保った
  • OSNMA は「メッセージ」を、SAS は「測距」を認証する二段構え。OSNMA は TESLA 方式——MAC を先に流し、鍵を 30 秒後に開示する——で 2025年7月24日から運用中。SAS は受信機に秘密鍵を持たせず、暗号化された拡散符号を録音しておき、数秒後に開示される OSNMA の鍵で検証する。どちらも無料・全世界
  • 2027 年に SAS の初期サービス宣言が目標。2026 年中に IOV 3 機を除く全衛星で E6-C を暗号化し、来年 EUSPA がサービス検証・認定を行う。みちびきの信号認証サービス(2024年4月開始)は ECDSA の電子署名で航法メッセージを認証する方式で、公式ページに測距レベルの認証は書かれていない——ここが Galileo との違い

🧭 1. まず基礎 — ジャミング・スプーフィング・「メッセージ」と「測距」・OSNMA と SAS

本論に入る前に、5 つのことを押さえます。すべて EU の OSNMA 文書(ICD/SDD/Info Note)と ESA・GSC の発表、内閣府の公式ページに出てくる範囲です。

1-1. ジャミングとスプーフィングとは — 「聞こえなくする」と「嘘を聞かせる」

GNSS の電波は、2 万 km 上空から届くころには非常に弱くなっています。そこに強い電波をかぶせて受信機が衛星を追えなくするのがジャミング(jamming)です。結果は「位置が出ない」で、受信機は自分が困っていることを知っています。OSNMA Info Note によると、ジャミングの事案は非常に多数報告されていて、その大半は「プライバシー保護装置」と称する(多くの国で違法な)妨害器によるものです。

スプーフィング(spoofing)は、衛星の信号にそっくりな偽の信号を送って、受信機に嘘の位置や時刻を計算させる攻撃です。内閣府みちびき公式サイトの説明がわかりやすいので引きます——民生用の測位信号は仕様が一般に公開されているので、知識があれば第三者でも同じ信号を作り出せる。しかしこれまで、第三者が作った信号と本物の衛星からの信号を区別する仕組みはなかった。対策を講じていない受信機が攻撃を受けると「本当は東京都にいるのにデータ上は神奈川県にいる」と認識させられ、自律飛行するドローンや自動運転車、自律航行船では乗っ取りのおそれが生じる、と。

本物の信号を受信して少し遅らせて再送するミーコニング(meaconing)もスプーフィングの一種で、Jammertest の試験項目にも「jamming, spoofing, meaconing」と並んでいます。Info Note は、スプーフィングの報告件数はジャミングより少ないが増えており、成功した(気づかれない)攻撃は被害者が検知も報告もしていない可能性がある、と書いています。

💡 ワード解説:認証は「ジャミング」には効かない

OSNMA Info Note は、認証について「スプーフィング事象の発生そのものを防ぐわけではなく、ジャミングからは守らない」と明記しています。GSC の 1 周年記事も同じ趣旨です。ESA の発表では、ジャミングは信号電力に関するよく知られた技術で対処されるのに対し、スプーフィングは格段に複雑で、量産機器には OSNMA や SAS のような専用サービスが要る、と役割を分けています。認証は「聞こえなくする攻撃」ではなく「嘘を聞かせる攻撃」への答えです。

1-2. 測位は「航法メッセージ」と「測距」の 2 つでできている

ESA の発表は、受信機が位置を出すために使う材料を 2 つに整理しています。

  • 航法メッセージ(navigation message)— 衛星が送ってくるデータ。衛星の軌道(どこにいるか)と衛星時計の情報
  • 測距(ranging measurement)— 信号が衛星から受信機に届くまでの時間。光速を掛ければ距離になる

衛星の位置がわかり、そこまでの距離が 4 機分以上わかれば、受信機の位置と時刻が解けます(4 機必要な理屈はみちびき記事の QZSS 節で触れました)。攻撃者から見ると、嘘をつく場所も 2 つあるということです。

flowchart TD O["OSNMA
メッセージ認証
2025年7月 運用開始"] -. 守る .-> M S["SAS
測距の認証
2027年 初期サービス目標"] -. 守る .-> R subgraph IN["受信機に入る 2 つの材料"] M["航法メッセージ
衛星の軌道・時計"] R["測距
到達時刻から距離"] end M --> P["位置・時刻の解
4 機以上"] R --> P

OSNMA Info Note は、これを「データレベルの認証」と「レンジレベルの認証」と呼び、「両方を組み合わせて初めて、認証された PVT(位置・速度・時刻)の解が計算できる」と書いています。そして念を押すように、「PVT が検証されていない測距情報を使って計算されている場合、それは認証済みとはみなせない」とも。2021 年のこの文書の時点で、レンジレベルの認証は「E6 帯で提供予定の Commercial Authentication Service(CAS)」として予告されていました。今回試された SAS はその後継にあたります(本記事では GSC の現在の呼称 SAS で統一します)。

1-3. OSNMA とは — 「先に MAC、30 秒後に鍵」の TESLA 方式

OSNMA は Galileo の E1-B 信号(GPS L1 と同じ 1575.42 MHz 帯)に載る航法メッセージ I/NAV の、もともと予約されていたフィールドに認証データを入れる仕組みです。GSC のサービスページによれば、予約フィールドを使うため既存の測位性能に一切影響を与えません。ICD の数字で言うと、I/NAV の 1 ページに 40 ビットの OSNMA 領域があり、30 秒のサブフレームで 15 ページが流れるので、30 秒ごとに 120 ビットの HKROOT メッセージと 480 ビットの MACK メッセージが届きます。

認証の本体は TESLA(Timed-Efficient Stream Loss-Tolerant Authentication)という放送向けの軽量プロトコルです。ICD の説明を噛み砕くと、

  1. 衛星は航法データに対する MAC(メッセージ認証コード。ICD では「タグ」・20〜40 ビット)を先に流す。この時点で受信機は検証できない——MAC を作った鍵をまだ知らないから
  2. 次の MACK メッセージ(30 秒後)で、その鍵を公開する(ICD 5.8.2 節「タグは次の MACK メッセージで放送される鍵で検証する」)
  3. 鍵は一方向関数でつながった鎖(96〜256 ビット)を生成とは逆順に流したもの。受信機は届いた鍵を関数に通して、既に信頼している根鍵(KROOT)に辿り着くか確かめる
  4. 根鍵は ECDSA(P-256 または P-521)の電子署名で認証され、その公開鍵は Merkle 木で更新できる。Merkle 木の根だけは受信機に最初から入れておく(GSC からの一回きりの取得)
flowchart TD S1["衛星 → 受信機:サブフレーム n
航法データ + MAC(タグ)"] --> R1["受信機:データと MAC を保存
鍵を知らないので、まだ検証できない"] R1 --> S2["衛星 → 受信機:サブフレーム n+1(30 秒後)
鍵 K(n) を開示"] S2 --> R2["受信機:K(n) を一方向関数で辿り
既知の根鍵 KROOT に一致するか確認"] R2 --> R3["受信機:K(n) で MAC を再計算
一致すれば「n の航法データは本物」"]
💡 ワード解説:なぜ「後から鍵を出す」で認証になるのか

鍵が公開された瞬間から、誰でもその鍵で MAC を作れます。だから TESLA では「MAC が届いた時点で、鍵はまだ誰も知らなかった」ことが安全の根拠です。そのためには受信機の時計が正しくないといけません——受信機の時計が遅れていると、攻撃者が公開済みの鍵で作った偽 MAC を「まだ鍵が出ていない時刻のもの」と誤認するからです。GSC のサービスページが、OSNMA 対応受信機に「Galileo System Time(GST)への 30〜300 秒以内の時刻同期」を要件として挙げているのはこの理由です。同じページは、保存する暗号材料に必要なのは完全性であって機密性ではない、とも書いています。受信機に秘密は要らない——ここが後述の SAS にもつながる設計思想です。

もう一つ、Galileo 向けの工夫として ICD が挙げるのがクロス認証です。全衛星が同じ鍵鎖を使うので、ある衛星から届いた MAC で別の衛星の航法データも認証できます。ICD 発行時点で OSNMA データを送っていたのは全衛星ではなく 20 機でしたが、この仕組みで残りの衛星のデータも認証できます。

OSNMA は 2021年11月15日に公開観測フェーズが始まり、2025年7月24日に初期サービスが宣言されました(Service Notice #20)。GSC の 1 周年記事によると、EU では 2025 年 12 月から新規登録のトラック・バスに OSNMA 機能付きスマートタコグラフが義務化され、Furuno のタイミング受信機や STMicroelectronics の Teseo V にも実装が進んでいます。

1-4. SAS とは — 拡散符号そのものを暗号化して「測距」を認証する

SAS が触るのは航法メッセージではなく、その下の層——信号を広帯域に広げている拡散符号(spreading code)です。GNSS の受信機は、既知の符号列と受信信号の相関を取って「信号がいつ届いたか」を測り、それが測距になります。符号が公開されているから誰でも本物そっくりの信号を作れる、という 1-1 の弱点は、まさにここにあります。

Galileo の E6 帯(1278.75 MHz)には、データを載せる E6-B と、データを載せないパイロット成分 E6-C があります(ESA Navipedia の信号プランによれば、E6 は両成分とも信号レベルでの暗号化に対応した設計です)。SAS はこの E6-C の拡散符号を暗号化します。GSC の 8 月 6 日の記事と 9 月 17 日の発表を合わせると、仕組みは次のとおりです。

  • 地上ミッションセグメント(GMS)が E6-C 暗号化用の鍵材料を管理し、衛星に安全に渡す
  • European GNSS Service Centre 内の SAS サーバが RECS(Re-Encrypted Code Sequences)を生成し、インターネット経由で利用者に配る。RECS は E6-C の拡散符号列を OSNMA の「未来の鍵」で再暗号化したもの
  • 受信機は測位のたびに、暗号化された E6-C 信号のデジタルサンプルを記録しておく。数秒後、対応する OSNMA の鍵が衛星信号で開示されたら、その鍵と事前に取得した認証情報(RECS)を使って記録済み信号を検証し、認証済みの測距で位置を計算する

つまり SAS は、受信機に秘密鍵を保存させず、地上との通信路に常時つながせることもなく、測距を認証します。GSC はこれを、従来の軍用グレードの GNSS 方式が秘密鍵の保管や継続的な地上支援を必要とするのと対比して説明しています。OSNMA の「受信機に秘密は要らない」という設計思想が、そのまま測距の層まで延びた形です。

1-5. なぜ「測位が成立した」が初なのか

E6-C の暗号化自体は、今回が最初ではありません。GSC の 8 月の記事と Service Notice #21 によると、2025年12月3日から Launch 3 の衛星(E14・E18)で E6-C の暗号化試験が始まり、以後継続的に暗号化されています。ただし 2 機では測位になりません。測位には最低 4 機の測距が要るからです。

9 月 16 日の試験で新しかったのは、運用中の FOC 衛星 5 機(E06・E21・E23・E34・E36)が同時に E6-C を暗号化したことです。ヨーロッパ上空で 4 機以上が同時に見える状態を 2 時間つくり、OSNMA で認証した航法メッセージと、SAS で認証した測距を「4 機以上から同時に」得た。これが GSC の言う「first-ever civil authenticated GNSS position」の中身です。しかも、それが実験室ではなく、意図的にスプーフィングが飛び交う Jammertest の会場で成立した——ここに ESA が「real-world」と繰り返す理由があります。


📜 2. 何が起きたか — OSNMA の運用開始から Jammertest の実地測位まで

timeline title Galileo 認証サービスの歩み 2021〜2025 OSNMA : 2021/11/15 公開観測 フェーズ開始 : 2025/7/24 初期サービス宣言 Service Notice 20 2025〜2026 SAS 試験 : 2025/12/3 L3 衛星の E6-C 暗号化開始 : 2026/8/6 GSC が SAS 進行中を告知 : 2026/9/16 FOC 5機で暗号化 妨害下で初の認証測位 2026〜2027 サービス化 : 2026年内 IOV 除く 全衛星で E6-C 暗号化 : 2027 SAS 初期サービス 宣言が目標

Jammertest とは — 妨害を「わざと浴びる」ための島

Jammertest は毎年 9 月にノルウェー北部の島 Andøya で開かれる、公式サイトいわく「世界最大の公開 PNT/GNSS 耐性試験」です。主催はノルウェー公共道路庁、通信庁(Nkom)、国防研究所(FFI)、計量庁、宇宙庁、地図庁、空港運営会社 Avinor で、運営は Testnor が担います。2026 年は 9 月 14〜18 日に開催されました。空港を含む 4 つの試験エリアで、参加者は実際の電波によるジャミング・スプーフィング・ミーコニングにさらされます。北極圏の高い山並みが天然の壁になり、市民生活への影響を抑えつつ大電力の妨害電波を出せる、という立地です。

住民向けの告知(8 月 28 日・ノルウェー語)には具体的な数字があります。試験期間は 9 月 10〜18 日、最大放射電力は 200 W(大半はそれよりずっと低い)、許可された周波数帯は 1150〜1300 MHz と 1545〜1620 MHz。前者は E6 帯(1278.75 MHz)を、後者は E1/L1 帯を含みます。すべての GNSS サービスが影響を受ける、と明記されています。

9 月 16 日の 2 時間 — 5 機の暗号化信号と、2 つの受信地点

Service Notice #21 Issue 1.1(9 月 3 日)は、この試験を事前に告知していました——「2026年9月16日 16:00〜18:00 CEST、複数の FOC 衛星で暗号化 E6-C 信号が追加で観測される」。GSC の発表によれば実際の時刻は 14:00〜16:00 UTC(同じ時刻の UTC 表記)で、衛星は E06・E21・E23・E34・E36 の 5 機。受信側は Andøya の Jammertest 会場と、ESA の航法研究所(ESTEC・オランダ)です。GSC は「異なる場所に置かれた複数の SAS 受信機」と書いており、2 地点以外にもあった可能性がありますが、地点名として挙がっているのはこの 2 つです。

会場でのスプーフィング試験の結果を、GSC は図の説明としてこう記しています——緑の点(SAS 受信機の位置)は真の正しい位置を保ち、赤い印(市販受信機の位置)は偽の位置に飛ばされた。3 次元描画では、偽の軌跡が真の位置から始まって山の上へ跳び、左へ曲がって町へ降りていく。位置は完全にスプーファーの制御下にある、と。従来受信機が騙されている同じ時間・同じ場所で、SAS 受信機は攻撃を検知し、認証済みの Galileo 信号だけで解を保ちました。

✅ 関係者の言葉(一次資料からの引用)
  • ESA Galileo 技術責任者 Joerg Hahn:「信号認証と航法メッセージ認証を組み合わせることで、利用者は自分の端末が示す位置を信頼できると知ることになる」
  • EUSPA PNT 部門長 Guerric Pont:「航法メッセージ認証と認証済み測距を組み合わせることで、Galileo はスプーフィングへの耐性と、利用者に提供する測位情報への信頼をさらに強化する」
  • ESA Galileo プログラムマネージャ Miguel Manteiga Bautista:「量産市場の利用者向けに先進的な保護機能を持ち、加えて政府利用者向けにはさらに堅牢な PRS がある。このサービス群が Galileo を唯一無二のシステムにしている」

誰が何をしたか、そして次は

GSC の発表は分担を明記しています。欧州委員会の防衛産業・宇宙総局(DG DEFIS)が共同研究センター(JRC)の支援を受けて SAS の設計を主導し、EUSPA が Galileo 運用者 GSOp とともに試験運用を統括して SAS を運用サービスとして開発、ESA が衛星・地上インフラの開発と現地試験の支援を担いました。ESA 側の記事では「概念は欧州委員会が定義し、ESA と EUSPA がアーキテクチャを設計して衛星と地上設備を更新した」となっています。

これからの予定は次のとおりです。

時期 予定(一次資料の記述) 出典
継続中 L3 衛星(E14・E18)と他の衛星を含めた SAS 試験を継続。L3 の E6-C は常時暗号化のまま GSC 9/17・Service Notice #21
2026 年内 IOV 3 機(GSAT0101〜0103)を除く全衛星で E6-C を暗号化 GSC 8/6
数か月以内 SAS のインタフェース制御文書(ICD)と受信機ガイドラインを GSC で公開 GSC 8/6
2027 年 EUSPA が欧州委員会・ESA・産業界とサービス検証・認定を実施 → SAS 初期サービス宣言 ESA 9/17・GSC 9/17

SAS も OSNMA も無料で、全世界で利用可能になる予定です(ESA)。Galileo の高精度サービス HAS の利用者も認証の恩恵を受けられる、とも書かれています。ただし Service Notice #21 には HAS 利用者向けの注意があります——HAS の信号を受ける受信機は、E6-C の助けを借りずに E6-B を捕捉・追尾できる必要がある。E6-C はデータを載せないパイロット成分なので、暗号化後は符号を知らない受信機が追尾の補助に使えなくなる、というのが背景と読めます。


🔬 3. 仕組みの図解 — 受信機側に何が要るか・鍵配布・遅延

3-1. 認証済み測位までの流れ

OSNMA と SAS を両方使う受信機の中で、何がどの順に起きるかを一枚にまとめます。SAS 部分は GSC の説明文(ICD 未公開)にある粒度までです。

flowchart TD K0["事前:Merkle 木の根を取得
(GSC から一回きり)"] --> A["E1-B I/NAV を受信
航法データ + OSNMA データ"] A --> B["TESLA 検証
30 秒後の鍵で MAC を照合"] K1["事前:RECS を取得
(ネット経由・未来鍵で再暗号化)"] --> C["E6-C 暗号化符号の
サンプルを記録"] C --> D["開示鍵で RECS を復号
→ サンプル照合 → 認証済み測距"] B -->|"開示された鍵"| D B --> E["認証済みメッセージ + 測距
4 機以上 → 認証済み測位"] D --> E

3-2. 受信機側に要るもの — 3 つのサービスを並べる

OSNMA(運用中) SAS(試験中) 従来の軍用グレード方式(GSC の対比・参考)
認証の対象 航法メッセージ(データ) 測距(拡散符号) 信号全体
使う信号 E1-B I/NAV の予約フィールド E6-C(1278.75 MHz) 専用の暗号化信号
受信機に保存するもの Merkle 木の根・公開鍵(完全性が要件、機密性は不要) 記録した E6-C サンプル・RECS(秘密鍵は不要 秘密鍵(機密保持が必要)
地上との通信 不要(根の初回取得と、任意の更新のみ) RECS をインターネットで事前取得(常時接続は不要) 継続的な支援が前提
時刻の要件 GST に 30〜300 秒以内で同期 OSNMA の鍵開示に依存(GSC は「数秒後」と記述)
認証が届く遅れ 鍵開示まで 30 秒(Slow MAC は+5 分) 「数秒後」(GSC)
利用資格・費用 無料・全世界 無料・全世界(予定)

OSNMA の列は GSC サービスページと ICD、SAS の列は GSC の 8 月 6 日と 9 月 17 日の記事、右端の列は GSC の「従来の軍用グレード GNSS 方式では秘密鍵の保管や継続的な地上支援が典型的に必要」という対比の記述に基づきます。Galileo で政府向けに提供されている PRS については、ESA が「さらに堅牢なジャミング・スプーフィング保護を政府利用者に提供する」と位置づけている以上の詳細は本記事の出典にありません。

3-3. 認証は必ず「少し遅れて」届く

TESLA は構造上、認証が後追いになります。OSNMA の SDD(Annex D)は、認証済みデータで最初の位置が出るまでの時間 TTFF-AD を条件別に示しています。

起動条件 受信機が持っているもの TTFF-AD(95%)
ホットスタート 公開鍵+検証済みの TESLA 根鍵 130 秒
ウォームスタート 公開鍵のみ 300 秒
コールドスタート Merkle 木の根のみ(公開鍵を電波で待つ) 6 時間以内

コールドスタートの「6 時間以内」は、公開鍵が電波(DSM-PKR)で流れる間隔——galileo-osnma README によれば 6 時間ごと(GST の 00:00・06:00・12:00・18:00)——と符合します。Info Note も「航法データは受信条件により 1 分から数分の遅れで認証される」と書いています。SAS はこの上に載るので、認証済みの測距が出るのも、OSNMA の鍵が開示されてから——GSC の言う「数秒後」——になります。

ここで押さえておきたいのは、位置の計算そのものは今までどおり即座にできるということです。遅れて届くのは「その位置が本物だったという保証」です。受信機は「今の位置(未認証)」と「少し前の位置(認証済み)」を持つことになり、両者が食い違えば攻撃を疑える(ここは筆者の整理です)。Jammertest で SAS 受信機が「攻撃を検知し、認証済み信号だけで解を保った」というのは、この構造が実際に働いた記録です。

💡 ワード解説:Slow MAC(ADKD=12)

OSNMA には、鍵の開示をさらに 10 サブフレーム(5 分)遅らせる「Slow MAC」という認証種別があります(ICD 4.2.1.3 節)。その分 TTFF-AD も長くなります(SDD:ホット 460 秒・ウォーム 520 秒)。GSC のサービスページが時刻同期の要件を「動作モードにより 30〜300 秒」と幅を持たせているのは、この種別の違いに対応するものと読めます。galileo-osnma の README にある「Slow MAC を使い 36 衛星分を持つと約 76 KiB、使わず 12 衛星分なら約 8.5 KiB」というメモリ見積もりは、この待ち時間の分だけデータを溜めておく必要があることの裏返しです。


🇯🇵 4. 日本の読者への接続 — みちびきの「信号認証サービス」と比べる

みちびき(QZSS)にも認証があります。内閣府の公式サイトは「信号認証サービス」として、2024 年 4 月からサービスを開始したと案内しています(現状は試験鍵による配信で、都合により中止・中断の可能性がある、との注記つき)。仕様書は IS-QZSS-SAS-001(2024年5月27日)です。

公式ページと仕様書によると、仕組みはこうです。

  • みちびきの管制局が秘密鍵で電子署名を生成し、航法メッセージに含めて衛星から配信する。受信機はあらかじめ入手した公開鍵で署名を検証し、メッセージの改竄の有無を確かめる
  • 認証の範囲は QZSS の航法メッセージ(L1C/A・L1C/B の LNAV、L5 の CNAV、L1C の CNAV2)。加えて、地上の監視局で受信した GPS と Galileo の航法メッセージ(GPS L1C/A・L1C・L5、Galileo E1b I/NAV・E5a F/NAV)も署名し、みちびきの L6E 信号で配信する。この GNSS 向けメッセージが QZNMA(QZSS Navigation Message Authentication)です
  • 署名は SHA-256 + ECDSA P-256、署名長 512 ビット(IS-QZSS-SAS-001)。公開鍵は 108 個が生成され、各 DER ファイル約 96 バイト、有効期間は原則 1 年。配布方法は「みちびき Web サイトで後日案内」
  • カバレッジは、QZSS 信号の認証が衛星測位サービスと同じ範囲、GPS・Galileo の認証が MADOCA-PPP と同じ範囲

Galileo の二段構えと並べてみます。

Galileo OSNMA Galileo SAS みちびき 信号認証サービス
認証の層 航法メッセージ 測距(拡散符号) 航法メッセージ
方式 TESLA(MAC + 遅延鍵開示、根鍵は ECDSA) 暗号化拡散符号 + OSNMA 鍵で再暗号化した RECS ECDSA P-256 の電子署名を直接埋め込み
認証データの大きさ タグ 20〜40 ビット・鍵 96〜256 ビット(30 秒ごと) ICD 未公開 署名 512 ビット(サブフレームに分割)
他システムの認証 将来 GPS の航法データ認証を予定(GSC 1 周年記事) GPS・Galileo のメッセージも L6E で認証
受信機に要る鍵 Merkle 木の根(+公開鍵) 秘密鍵不要 公開鍵(108 個・1 年)
状況(2026年9月) 初期サービス(2025/7/24〜) 試験中・2027 年に初期サービス目標 2024/4〜(試験鍵)

方式の違いは設計思想の違いでもあります。TESLA は「鍵を後から出す」ことで認証データを小さくでき、E1-B の予約 40 ビットに収まりますが、受信機の時刻同期が要件になります。みちびきの方式は通常の電子署名なので遅延鍵開示も時刻同期要件もない代わりに、512 ビットの署名を LNAV のサブフレームに分割して運ぶ必要があります(仕様書 5 章)。どちらが優れているかではなく、載せられる信号の空きビット数と、想定する受信機の作りの違いです。

そして本記事の主題との関係で言えば、内閣府の公式ページと IS-QZSS-SAS-001 に書かれているのは航法メッセージの認証であり、測距(拡散符号)レベルの認証は記載がありません。Galileo が今回試した SAS に相当する層は、みちびきの公開資料の範囲では確認できませんでした。

⚠️ 同じ「SAS」でも指すものが違う

Galileo の SAS は Signal Authentication Service=測距の認証、みちびきの仕様書 IS-QZSS-SAS も Signal Authentication Service ですが、中身は航法メッセージの電子署名認証です。略語が同じで層が違うので、検索するときは「Galileo SAS E6-C」「QZSS 信号認証 L6E」のように信号名を添えると混乱しません。

なお、みちびき記事で扱った SLAS/CLAS は「補強」——位置を正確にするサービスで、今回の「認証」——位置を信じられるようにするサービスとは軸が別です。精度が cm 級でも、偽の信号で cm 級に嘘をつかれれば意味がない。この 2 つの軸が両方そろって初めて、自律移動するものに GNSS を任せられる、というのが今回の一連の発表の含意です。


🧰 5. 手元の受信機で OSNMA を試すには(紹介のみ)

SAS は ICD も受信機ガイドラインも未公開で、E6 帯(1278.75 MHz)を受けられる受信機が前提なので、個人が今すぐ試せる段階ではありません。一方 OSNMA は、GSC が「Receivers implementing Galileo OSNMA」として対応受信機の一覧を公開しています(メーカー公表情報の集約で、EUSPA による検証・認定ではない、との注記つき)。電子工作で手が届きそうな名前を拾うと——

  • u-blox ZED-F9P(産業用ナビ・ロボット向け)、NEO-M9L(車載)、ZED-X20 シリーズ
  • Quectel LC29H(精密農業・ロボット・ドローン)、LC99T(タイミング)
  • Septentrio mosaic-X5 ほか、STMicroelectronics Teseo VFuruno GT-90/GT-100/GT-9001(タイミング)

ZED-F9P はみちびき記事で SLAS 対応品として挙げたモジュールと同じで、認証と補強の両方に名前が出てくることになります。

ソフトウェア側では、OSS の galileo-osnma(Rust・Apache-2.0/MIT)が OSNMA SIS ICD v1.1 に沿った実装を公開しています。README によれば no_std でビルドでき、スタック上に静的にデータを置き、Longan Nano(GD32VF103・Flash 128 KiB・RAM 32 KiB の RISC-V マイコン)で動くデモも同梱。Galmon の ubxtool 経由で u-blox 受信機の I/NAV ページを読ませる使い方(galmon-osnma-ubxtool /dev/ttyACM0 --pubkey ... --pkid N)が案内されています。公開鍵と Merkle 木の根は GSC の「GSC Products」から取得しますが、アカウント登録が必要です。README 記載時点の証明書ファイル名は OSNMA_PublicKey_20251210100000_newPKID_2.crt(PKID 2)とあります。

⚠️ ここは実機で確かめていません

筆者は GNSS 受信機を持っておらず、上記はいずれも GSC の一覧と galileo-osnma の README の記述の紹介です。各モジュールで OSNMA を有効にする手順や、認証結果がどの出力(NMEA/UBX など)でどう見えるかは、メーカーの資料で確認してください。試すなら、ZED-F9P 系の評価ボードを UART か USB でつなぎ、galileo-osnma の ubxtool 経路で I/NAV を流し込むのが README どおりの最短経路だと考えています。


📌 筆者の見方(GNSS は専門外ですが)

ここからは意見です。ESP32 に GNSS モジュールを UART でつないでログを取る——電子工作ではありふれた構成ですが、その位置を「信じてよい条件」を、筆者はこれまで「衛星が 4 機以上見えていて、HDOP が小さいこと」だと思っていました。今回の発表を読んで、それは精度の条件であって真正性の条件ではなかった、と気づかされました。ジャミングは「位置が出ない」という形で受信機が自分から白状してくれる。困るのはスプーフィングで、受信機は fix を出し続け、HDOP も良好なまま、嘘の座標を返してきます。認証が答えているのは、この「黙って嘘をつく」側の故障です。

もう一つ刺さったのは、認証は必ず遅れて届くという構造です。TESLA の 30 秒、SAS の「数秒後」、TTFF-AD の 130 秒——どれも位置の計算より後ろにあります。つまり自作のドローンや移動ロボットに認証を組み込むなら、「認証済みの位置だけで飛ぶ」設計は成り立たず、「未認証の位置で動きつつ、遅れて届く認証済みの位置と食い違ったら止まる/戻る」という二重の状態を持たせる設計になる。Jammertest で SAS 受信機が「攻撃を検知して認証済みの解を保った」というのは、まさにその動きです。センサ値の妥当性を別系統で後追い検証する、という組み込みでよくある構図が、測位でも本流になってきたのだと受け止めています。

正直に書くと、筆者はまだ OSNMA 対応受信機を触っていません。試すなら ZED-F9P 系の評価ボードと galileo-osnma の組み合わせから始め、認証済みの位置が「何秒遅れて」出てくるのかを、ロガー側でタイムスタンプを並べて眺めてみたい。SAS の ICD が公開されたら、E6 帯を受けられる受信機で何が必要になるのかも追うつもりです。

まとめ

  • 2026年9月16日 14:00〜16:00 UTC、Galileo の FOC 衛星 5 機(E06・E21・E23・E34・E36)が E6-C(1278.75 MHz)の拡散符号を暗号化。Andøya の Jammertest 会場と ESTEC の受信機が、OSNMA で認証した航法メッセージと SAS で認証した測距を 4 機以上から同時に得て、民生受信機として初の認証済み測位を成立させた。スプーフィング下で従来受信機が偽の位置に飛ばされる中、SAS 受信機は真の位置を保った
  • 測位の材料は「航法メッセージ」と「測距」の 2 つ。OSNMA(2025年7月24日運用開始・TESLA 方式・MAC の 30 秒後に鍵を開示)が前者を、SAS(暗号化拡散符号・OSNMA 未来鍵で再暗号化した RECS をインターネットで配布)が後者を認証する。受信機に秘密鍵は要らず、地上との常時接続も要らない
  • 認証は必ず遅れて届く。OSNMA の TTFF-AD はホット 130 秒・ウォーム 300 秒・コールド 6 時間以内(SDD)。位置の計算は即時、保証は後追い——この二重構造が「攻撃を検知して認証済みの解を保つ」動きの土台
  • 2026 年中に IOV を除く全衛星で E6-C を暗号化し、2027 年に SAS 初期サービス宣言が目標。無料・全世界。HAS 利用者は E6-C の助けなしで E6-B を追尾できる受信機が必要(Service Notice #21)
  • みちびきの信号認証サービス(2024年4月〜・IS-QZSS-SAS-001)は ECDSA P-256 の電子署名で航法メッセージを認証し、GPS・Galileo のメッセージも L6E で認証する。公式資料に測距レベルの認証は記載がなく、Galileo の SAS に相当する層は確認できない

よくある質問(FAQ)

Q. スマホや手持ちの GNSS モジュールは、今日から偽信号に強くなったのですか?

いいえ。認証は受信機側がプロトコルを実装して初めて働きます。OSNMA は 2025 年から運用中ですが、対応しているのは GSC の一覧にある業務用・産業用の受信機が中心です。SAS はまだ試験段階で、初期サービス宣言の目標は 2027 年、対応受信機に必要な仕様書(ICD・受信機ガイドライン)も本稿執筆時点で未公開です。

Q. OSNMA があるなら、SAS は何のために要るのですか?

OSNMA が認証するのは「衛星が送ってきたデータ」だけで、「そのデータを載せた信号がいつ届いたか」(測距)は守れません。OSNMA Info Note は「検証されていない測距情報を使って計算された PVT は認証済みとはみなせない」と明記しています。拡散符号を暗号化する SAS が加わって初めて、計算された位置そのものに認証が付きます。

Q. 受信機に秘密鍵を入れなくてよいのはなぜですか?

SAS では、E6-C の符号列を OSNMA の「未来の鍵」で再暗号化した RECS を、あらかじめインターネットで受け取っておきます。受信機は暗号化信号のサンプルを録音し、数秒後に衛星が OSNMA の鍵を開示した時点で、その鍵で RECS を解いて照合します。鍵が開示されるのは信号が届いた後なので、受信機が事前に秘密を持つ必要がありません。従来の軍用グレードの方式が秘密鍵の保管や継続的な地上支援を必要とするのと、GSC はここを対比しています。

Q. インターネット接続は必須ですか?

OSNMA は不要です(Merkle 木の根を最初に一度 GSC から取得するだけで、公開鍵の更新は電波でもできます)。SAS は RECS をインターネットで受け取る必要がありますが、GSC は「地上通信路で継続的に支援される必要がない」と説明しており、測位のたびに接続する方式ではありません。詳細は SAS の ICD の公開待ちです。

Q. みちびきでも同じことができますか?

みちびきの信号認証サービス(2024年4月開始・試験鍵)は、ECDSA P-256 の電子署名で航法メッセージを認証し、GPS と Galileo の航法メッセージも L6E 信号で認証します。これは Galileo の OSNMA と同じ「メッセージ認証」の層です。Galileo の SAS にあたる「測距の認証」は、内閣府の公式ページと IS-QZSS-SAS-001 には記載がありません。

Q. Galileo の高精度サービス HAS を使っている受信機に影響はありますか?

Service Notice #21 は、HAS 利用者に「E6-C の助けを借りずに E6-B を捕捉・追尾できること」を求めています。E6-C はデータを載せないパイロット成分で、暗号化後は符号を知らない受信機が追尾の補助に使えなくなるため、と読めます。L3 衛星(E14・E18)の E6-C はすでに常時暗号化されており、2026 年中に IOV を除く全衛星に広がる予定です。

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参考

本記事の一次資料は front matter の references に列挙しています(ESA・GSC の発表、Galileo Service Notice #21、OSNMA SIS ICD/SDD/Info Note、GSC の OSNMA 対応受信機一覧、Jammertest 公式サイト、内閣府みちびき公式サイトと IS-QZSS-SAS-001、galileo-osnma README)。いずれも 2026年9月19日に取得しました。X(旧 Twitter)の投稿は出典に使っていません。