はじめに
2026年9月15日 03:21 CEST(日本時間 10:21)、欧州宇宙機関(ESA)の FLEX(Fluorescence Explorer)と、Copernicus の Sentinel-3C が、仏領ギアナのギアナ宇宙センターから Vega-C ロケット(フライト VV30) で一緒に打ち上げられました。Sentinel-3C が先に、FLEX が約1時間後に分離され、ドイツの ESA 宇宙運用センター(ESOC)が両機から最初の信号を受信しています(ESA・9月15日)。
FLEX は「植物が光合成のときに出す蛍光を、軌道から測る」ことに特化した ESA 初の衛星です。植物は吸収した太陽光のほとんどを光合成に使いますが、ごく一部を赤〜近赤外の光として再放射しています。目には見えないその光は、光合成がどれだけ効率よく回っているかを直接映す指標になる——ここまでは生物の話です。この記事で追いたいのは、その先の計測の話です。反射した太陽光の中に埋もれた、けた違いに弱い蛍光を、どうやって 814 km 上空から取り出すのか。
答えは「太陽光が大気の酸素に吸収されて暗くなる波長を狙う」です。酸素の吸収帯(O2-A・O2-B)の底では、太陽→植物→衛星と往復する反射光が大きく減る一方、植物→衛星と片道だけの蛍光はそれほど減らない。だから吸収線の底には蛍光が「埋め戻し」として残る。それを 0.1 nm 刻みの分光器で読む——この一点に、FLEX の設計のほぼすべてが集約されています。
当サイトはRoman 宇宙望遠鏡の打上げ・みちびき7号機・Psyche の火星スイングバイと宇宙の話題を追ってきました。今回も実機で試せる題材ではないので、ESA の一次資料(打ち上げ記事・Facts and figures・ミッション選定報告書 SP-1330/2・要求文書 MRD)にある数値だけを使い、図で追います。
この記事では次の6点を扱います。
- 9月15日に起きたこと — Vega-C での2機同時打ち上げ、Vespa アダプタ、分離の順番と時刻
- 光合成の「蛍光」とは — 吸収した光のごく一部が赤〜近赤外で再放射される、2つのピーク
- なぜ軌道から測れるのか — 酸素吸収線の底で反射光が消え、蛍光だけが残る仕組み
- なぜ 0.1 nm の分解能が要るのか — 分離が最も効く分解能 0.3 nm と、その3倍のサンプリング
- なぜ Sentinel-3 と並走するのか — 大気補正と地表温度を隣の衛星から借りる、単独では成立しない設計
- FLORIS の中身 — 2台の分光器・二重スリット・偏光スクランブラ・大気の吸収線で波長校正
本記事の時刻・軌道・分光器の数値は、ESA の打ち上げ記事(9月15日)・Facts and figures・ミッションキット(9月14日版)・ミッション選定報告書 SP-1330/2(2015年)・MRD v3.1(2024年)、Avio・Thales Alenia Space・Fraunhofer IOF のプレスリリースにあるものだけを使っています。SP-1330/2 は選定時(2015年)の文書なので、そこにしかない設計値(瞳径・SNR 要求など)は「選定時の要求」として書き分けます。打ち上げ後の状態は 2026年9月16日時点で ESA が公表している範囲に限ります。「蛍光は反射光の何%か」という数値は一次資料に明示が無かったため、本記事では書きません。
- FLEX は光合成の蛍光を軌道から測る ESA 初の衛星(Earth Explorer 第8号・400 kg・高度 814 km・寿命 3.5 年)。Vega-C VV30 で Sentinel-3C と同時に打ち上げられ、両機とも ESOC が初信号を受信。ESA は「Vega-C が2つの地球観測ミッションを別々の軌道へ運べることを示した」と位置づけ
- 測り方の核心は「酸素の吸収線の底」。太陽光が大気の酸素に吸収される O2-A(759〜769 nm)・O2-B(686〜697 nm)では往復の反射光が大きく減り、片道の蛍光が「埋め戻し」として残る。分光器 FLORIS はこの2帯を 0.1 nm 刻みで読む(分解能は約 0.3 nm・その3倍でサンプリング)
- FLEX 単独では成立しない設計。Sentinel-3 の 40〜100 km 前方(6〜15 秒差)を並走し、OLCI から大気補正(雲・エアロゾル・水蒸気)、SLSTR から地表温度を借りて蛍光を解釈する。まず Sentinel-3A と組み、のちに 3C が交代
🚀 1. 9月15日に起きたこと — Vega-C で2機を同時に、別々の軌道へ
分離の順番と時刻
ESA が9月9日に公開した中継の番組表(予定)と、9月15日の打ち上げ記事・Avio のリリース(実施)を突き合わせると、当日の流れは次のとおりです。CEST は UTC+2、JST は UTC+9 なので、JST は CEST の7時間後です。
| できごと | 中央欧州夏時間(CEST) | 日本時間(JST) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 中継開始 | 9月15日 02:50 | 9月15日 09:50 | ESA 番組表 |
| 離昇(VV30) | 9月15日 03:21 | 9月15日 10:21 | ESA・Avio(実施) |
| Sentinel-3C 分離 | 04:21(予定) | 11:21(予定) | ESA 番組表。ESA 打ち上げ記事は「先に Sentinel-3C、約1時間後に FLEX」 |
| FLEX 分離 | 05:17(予定) | 12:17(予定) | ESA 番組表。Avio は「離昇から最後の分離まで 116 分」と実施値を公表(03:21+116分=05:17) |
| 両機から初信号 | 分離後 | — | ESA(ESOC が受信) |
日本からは火曜の午前中にあたる時間帯でした。ESA は分離の実施時刻を分単位では公表していないため、表の分離時刻は「番組表の予定」と「Avio の 116 分」から組み立てています。
Vespa アダプタ — 2機を縦に積む
ESA は今回の打ち上げを、Vega-C が2つの地球観測ミッションを、それぞれ必要な別の軌道へ運べることを示したフライトと位置づけています。2機を1本のロケットに載せるために Vespa(Vega Secondary Payload Adapter)という二段積みのアダプタを使いました。FLEX を Vespa の下段の内側に封入し、その上段に Sentinel-3C を載せる。フェアリングの中で「上に Sentinel-3C、その下の箱の中に FLEX」という構造です(ESA・9月2日)。
順番は構造で決まります。上に載った Sentinel-3C が先に分離され、Vespa の上段が外れてから FLEX が出てくる。ESA の9月14日の記事は「まず Sentinel-3C を分離し、いくつかの打ち上げ機の機動(launcher manoeuvres)のあとに FLEX を分離する」という手順を説明しています。Vega-C は固体燃料の3段で軌道に上がり、液体燃料の第4段が衛星を狙った軌道へ正確に置く構成なので(ESA)、この「1時間の間の機動」は第4段の仕事です。
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| ロケット | Vega-C・フライト VV30・Avio が打ち上げ運用者 | ESA・Avio |
| Vega-C 通算 | 8回目のフライト・Avio 運用では2回目 | Avio(7月30日) |
| 低軌道への打ち上げ能力 | 2,300 kg | ESA |
| 離昇時質量 | 210 t | ESA |
| Sentinel-3C 質量 | 1,143 kg(Avio)/約 1,140 kg(Thales Alenia Space) | Avio・TAS |
| FLEX 質量 | 397 kg(Avio)/約 400 kg(ESA・TAS) | Avio・ESA・TAS |
| 投入軌道 | 太陽同期・高度約 810 km・傾斜角 98.6°(Avio 実施値) | Avio(9月15日) |
| 離昇から最後の分離まで | 116 分 | Avio(9月15日) |
打ち上げ後の状態(9月16日時点)
ESA の打ち上げ記事は、両機の分離後に ESOC がそれぞれから「最初の信号」を受信し、ロケットからの分離と地上との通信確立を確認した、と書いています。この先「数日間」は打ち上げ初期運用フェーズ(LEOP)で、両機の健全性と性能を確認する。そのあと衛星と機器のコミッショニングに入ります。FLEX の Facts and figures はコミッショニングを「3か月」としています。
もうひとつ、ESA が「orbital gymnastics(軌道の体操)」と表現している運用があります。FLEX は最初 Sentinel-3A と組んでタンデム飛行し、のちに Sentinel-3C が 3A と入れ替わる。Sentinel-3 ミッションキットも「3C はコミッショニングとタンデム期間を経て 3A を置き換える」としています。コミッショニングが終われば Sentinel-3C の運用は Eumetsat に移り、FLEX は ESA が運用し続けます。
FLEX は ESA の FutureEO プログラムの Earth Explorer(研究ミッション)の第8号です。科学コミュニティが提案し、ESA が選定する小型の研究衛星群で、FLEX は 2015 年に第8号として選ばれました(ESA Earth Online)。一方 Sentinel-3C は EU の宇宙プログラムの地球観測部門 Copernicus の運用衛星で、Sentinel-3A(2016年)・3B(2018年)に続く3号機。海洋・陸域・氷・大気を系統的に測り、定常運用は ESA と Eumetsat が共同で担います。「研究のための衛星」と「業務のための衛星」が、同じロケットに乗った形です。
🌱 2. 光合成の「蛍光」とは — 吸収した光のごく一部が赤〜近赤外で戻る
植物の葉は青と赤の光を強く吸収し、緑を相対的に多く反射するので緑に見えます。吸収した光のエネルギーの行き先は3つで、ESA の解説はこう書いています。最適な条件では吸収した光の約 80%(SP-1330/2 では約 82%)が光合成に使われ、残りは熱として捨てられるか、蛍光として再放射される。クロロフィルが光子を吸って電子が励起状態に上がり、そのエネルギーが光化学反応に渡されなかった分の一部が、少し長い波長の光として戻ってくる——これが太陽光誘起クロロフィル蛍光(SIF: solar-induced chlorophyll fluorescence)です。
蛍光の出どころは、光化学反応を担う2つの光化学系です(ESA・SP-1330/2)。
| 光化学系 | 蛍光の波長 | ピーク | 性質 |
|---|---|---|---|
| PS II | 650〜780 nm | 約 685 nm(赤) | 調節機構の多くがここで働くため応答が動的。機能状態の変化が蛍光の形に直接反映される |
| PS I | ほぼ 700 nm 以上(遠赤〜近赤外) | 約 740 nm | 蛍光効率はほぼ一定で、クロロフィルが吸収した光の量を主に反映(SP-1330/2) |
放射スペクトル全体は約 640〜800 nm に広がり、この2つが重なって「2つのピークをもつ信号」として測られます。ESA は「最適条件で育つ植物では、2つのピークの高さが実際の光合成の光変換の優れた代理指標になる」と説明しています。
ここで大事なのは、蛍光は「植物が光っている」のとは違うということです。ESA の「10の意外な事実」は、蛍光は太陽光が要る(葉は暗闇では光らない)、ホタルのような生物発光とは根本的に違う、と念を押しています。だから FLEX は、植物が光合成をしている午前中の太陽光の下でしか測れません。軌道の降交点通過時刻を 10:00 頃に選んでいるのはこのためで、ESA は「緯度ごとの太陽の照明条件が、植物が光合成的に活発な時間帯の測定を保証する」と書いています。
なぜ蛍光で「健康」が分かるのか
ストレスがかかると、光合成の反応そのものと、吸収した光の配分の両方が変わります。ESA の解説によれば、霜や干ばつでは光合成が落ち、保護のために光の吸収を減らしたり熱で捨てる経路を増やしたりするので、蛍光は減る傾向にある。ところが除草剤のような持続的・極端なストレスでは、耐性のない植物で保護機構が早く使い果たされ、光合成装置が損傷して蛍光が強く増える。つまり蛍光は「下がれば不健康」という単純な指標ではなく、ストレスの段階で上にも下にも振れる。ESA はこの点を明確に書いていて、「だから科学者は蛍光を、他の多くの植生の特性と一緒に見る」としています。ここが第5節の「Sentinel-3 と並走する理由」につながります。
それでも蛍光が特別なのは、葉が目に見えて萎れる前に変化が出ることです(ESA)。従来の光学衛星が測ってきたのは反射光、つまり「どれだけ緑か・どれだけ葉があるか」でした。蛍光は光合成という機能そのものの出力に近い。ESA が FLEX を「光合成の活動を宇宙から測るために設計された初の衛星」と呼ぶのはこの意味です。
🔭 3. なぜ軌道から測れるのか — 酸素吸収線の底で反射光が消え、蛍光が残る
ここからが計測の話です。問題を素直に書くと、「衛星に届く光 = 反射した太陽光 R + 植物の蛍光 F」で、F は R に比べてごく小さい(SP-1330/2 は「反射光のごく一部(a very small fraction)」・MRD は「反射光に比べて小さい」と表現)。しかも大気は R も F も減衰させる。分光器が見るのは R+F の合計だけで、F を直接測る手段はありません。実験室なら照明の波長を選んで R を消せますが、太陽光ではそれができない——と、ESA の報告書は最初に断っています。
それでも取り出せる理由を、報告書は「2種類の光子は、通ってきた道が違う」と説明しています。
- 反射光 R の光子は、太陽→大気→植物→大気→衛星と、大気を往復している。太陽のスペクトル(フラウンホーファー線)と、大気の吸収を2回分、背負っている
- 蛍光 F の光子は植物の中で生まれ、植物→大気→衛星と、大気を片道しか通っていない。蛍光のスペクトルは滑らかで、大気の吸収を1回分しか受けない
植物の反射率も蛍光も波長に対して滑らかに変わるのに対し、地表に届く太陽光は吸収線のところで鋭く暗くなる。その暗くなった波長では R が急減し、F はそれほど減らないので、測定される R+F の谷底が、F のぶんだけ「埋め戻される」。報告書はこれを、反射率スペクトルに現れる「吸収線の波長での正のスパイク」と呼んでいます。FLORIS が読んでいるのは、この埋め戻しの量です。
上の図の縦軸に目盛はありません。曲線の高さは概念で、実際の R と F の比はこの図よりずっと大きい(F が小さい)はずです。伝えたいのは形だけで、F は帯の外にも同じだけ存在するのに、R が大きい場所では分離できず、R が落ちる帯の中でだけ見える、ということです。
なぜ酸素の吸収帯なのか — フラウンホーファー線でも水蒸気でもなく
暗くなる波長には候補が3種類あります。報告書(SP-1330/2 §4.2.1)が消去法で選んだ理由が、そのまま設計の説明になっています。
| 候補 | 何が暗くする | 使わなかった/使った理由(SP-1330/2) |
|---|---|---|
| 太陽のフラウンホーファー線 | 太陽大気の元素による吸収。地球大気の状態に左右されない | 吸収が弱く、蛍光による埋め戻しも小さい。解像するには非常に高い分光分解能と SNR が要り、粗い空間分解能でしか成り立たない |
| 水蒸気の吸収帯 | 大気中の H2O | 空間的にも時間的にも変動が大きく、鉛直分布も変わる。水蒸気のばらつきが蛍光のばらつきより大きくなりうるため不可 |
| 酸素の吸収帯(O2-A・O2-B) | 大気中の O2 | 空間・時間ともほぼ一定で鉛直にも均一。吸収は十分に強く、よく特性化されていて、地表気圧(標高)依存も補正できる。687 nm と 761 nm という位置が蛍光の放射範囲と大きく重なる |
酸素はどこでも大気に同じように混ざっているので、吸収線の「深さ」を計算で予測できる。予測できる谷を基準にすれば、実測との差が蛍光になる。「信号が無い場所」は、地球の大気が用意してくれていた、という言い方もできます。
フラウンホーファー線は、太陽光のスペクトルに見える暗線の総称です。歴史的に、酸素による 759 nm 付近の強い暗線は「A 線」、687 nm 付近は「B 線」と呼ばれ、その名残で酸素の吸収帯を O2-A(中心約 761 nm)・O2-B(中心約 687 nm) と呼びます(SP-1330/2 の表記)。FLEX の高分解能チャンネルは、それぞれ 759〜769 nm と 686〜697 nm の範囲を 0.1 nm 刻みで読みます(ESA Facts and figures)。狭い意味でのフラウンホーファー線(太陽由来)は、上の表のとおり FLEX の主役ではありません。
📏 4. なぜ 0.1 nm の分解能が要るのか — 分離が最も効く 0.3 nm と、その3倍
「細かく読めるほど良い」と思いがちですが、報告書の結論は違います。SP-1330/2 §4.4.1.1 は、蛍光 F と反射光 R の分離しやすさを分光分解能の関数として計算し、O2-A の吸収が最も深い最も厳しい区間で次のように述べています。
- 分解能が 0.6 nm より粗いと、分離しやすさは分解能とともに単調に悪化する
- 逆に 0.3 nm より細かくしても、多くのバンドで分離しやすさは悪化する
- したがって 0.3 nm 付近に最適値がある
「分離が最も効く分解能」を探して 0.3 nm に置き、そのうえでエイリアシングを避けるために分解能の 1/3 でサンプリングする——報告書は「この波長域の放射輝度曲線の形から、サンプリングと分解能の間に3倍の係数が要る」と書き、それが 0.1 nm です。オシロや ADC で「帯域の数倍でサンプリングする」感覚と同じ構造で、0.1 nm という数字は「細かければ良い」ではなく「0.3 nm を正しく再現するための最小」として出てきています。
この細かさは酸素帯だけに使い、他の波長域では 0.5〜2 nm まで落としています。報告書は「大量のデータが出るので、データレートを最小化するために領域ごとに最適化する」としています。FLORIS の波長配分を、報告書の表 4.2 と ESA の Facts and figures から起こすと次のようになります。
| 波長域 | 用途 | 分光分解能 | サンプリング | SNR 要求(選定時) |
|---|---|---|---|---|
| 500〜600 nm | PRI 帯(光化学反射率指数。キサントフィルによる 530 nm 付近の反射率変化から、熱で捨てる経路 NPQ を推定) | 3 nm | 2 nm | 245 |
| 600〜677 nm | クロロフィル吸収帯 | 3 nm | 2 nm | 245 |
| 677〜686 nm | O2-B の肩 | 0.6 nm | 0.5 nm | 340 |
| 686〜697 nm | O2-B 帯 | 0.3 nm | 0.1 nm | 175 |
| 697〜740 nm | レッドエッジ | 2 nm | 0.65 nm | 425 |
| 740〜755 nm | O2-A の肩 | 0.7 nm | 0.5 nm | 510〜1015(線形) |
| 755〜759 nm | O2-A の肩 | 0.7 nm | 0.5 nm | 1015 |
| 759〜762 nm | O2-A 帯(最も暗い区間) | 0.3 nm | 0.1 nm | 115 |
| 762〜769 nm | O2-A 帯(回復側) | 0.3 nm | 0.1 nm | 115〜455(線形) |
| 769〜780 nm | O2-A の肩 | 0.7 nm | 0.5 nm | 1015 |
SNR の列を見ると、最も暗い 759〜762 nm の要求が 115 と、他より一桁近く低いのが分かります。光が無い場所で測るのだから当然で、報告書は「O2-A の吸収端、特に 761 nm での低い放射輝度のために大きなダイナミックレンジが要り、759〜762 nm・0.1 nm サンプリングでの SNR=115 が放射計としてのサイズを決める」と書いています。選定時の検討では、この要求を満たすために高分解能側の瞳径が約 80 mm、低分解能側が約 40 mm と見積もられました(SP-1330/2・選定時の値)。
蛍光そのものの精度要求は、MRD v3.1 にこう書かれています。2つのピーク(685・740 nm 付近)の高さを、ピーク値 2 mW m⁻² sr⁻¹ nm⁻¹ に対して誤差 0.2 mW m⁻² sr⁻¹ nm⁻¹ で。つまり 10% です。スペクトル全体を積分した総蛍光量は、野外実験では典型的に 80〜150 mW m⁻² sr⁻¹(SP-1330/2)で、これを約 10% の精度で求めるには、2つのピークを両方測る必要があります。報告書は、761 nm だけから総量を推定すると 10% 精度を満たすのは 60% 未満のケース、687 nm だけでは 31% に落ちる、両方使って初めて要求内に収まる、と実験データで示しています。O2-B と O2-A の2つの帯を両方読む理由はここにあります。
🛰️ 5. なぜ Sentinel-3 と並走するのか — 単独では成立しない設計
FLEX は Sentinel-3 の 40〜100 km 前方(ESA Facts and figures)、時間にして 6〜15 秒先(ESA「The satellite」)を、同じ軌道面・同じ高度で飛びます。同じ地点を FLEX が先に、Sentinel-3 が十数秒後に見る形です。ESA はこれを「convoy(隊列)」「tandem(タンデム)」と呼び、SP-1330/2 は「FLEX の観測と OLCI・SLSTR(直下視)の観測の時間的な共通登録が常に 6〜15 秒以内」「FLEX の観測幅が OLCI の直下カメラ(4番カメラ)の観測幅に完全に含まれる」ことを軌道選定の条件にしています。
なぜ隣の衛星が要るのか。第3節の「反射光 R と蛍光 F」の話に戻ると、FLORIS が測るのは大気の上端での R+F です。そこから地表での蛍光を出すには、まず大気の効果を取り除く大気補正が要り、そのために雲・エアロゾル・水蒸気の情報が要る。報告書は「エアロゾルの特性化には青から短波長赤外までの測定、できれば同じ地点を2つの大気経路で見る二方向観測が望ましい」と書いていますが、FLORIS の波長範囲は 500〜780 nm しかありません。この不足分を Sentinel-3 の OLCI(21 バンド・幅 1,270 km・300 m)と SLSTR(二方向視の放射計・地表温度 1,000 m)が埋めます。
さらに、第2節で見たとおり蛍光は上にも下にも振れるので、解釈にも追加の情報が要ります。報告書が挙げているのは、①熱で捨てる経路(NPQ)を反射率変化で推定する PRI、②植物が吸収した光の総量(クロロフィル量・葉面積指数・被覆率)、③冠層温度——「すべての生物物理・生理的プロセスは冠層温度に調節されるので、同時測定が解釈の前提条件」と明記しています。①は FLORIS 自身の 500〜600 nm 帯で、②は OLCI で、③は SLSTR で測る、という分担です。
| Sentinel-3 の機器 | 諸元(Sentinel-3 ミッションキット) | FLEX が借りるもの |
|---|---|---|
| OLCI(海洋・陸域カラー計) | 21 バンド・300 m・観測幅 1,270 km | 雲・エアロゾル・水蒸気の大気補正、被覆分類、植生パラメータ |
| SLSTR(海面・陸面温度放射計) | 地表温度 1,000 m・二方向視・山火事検出も | 冠層温度(蛍光を解釈する前提条件) |
| SRAL(レーダ高度計)・MWR(マイクロ波放射計) | 海面高・波・氷厚・内水面の高さ | (FLEX の直接の入力ではない) |
データ処理の段階で見ると、この設計はもっとはっきりします。ESA の「Data products」によれば、FLEX の Level-1c は FLORIS と Sentinel-3 の OLCI・SLSTR の放射輝度を共通のグリッドに並べ直して合体させたもので、Level-2(地球物理量)は FLORIS・OLCI・SLSTR の測定から物理モデルで求めます。つまりプロダクトの定義に Sentinel-3 のデータが最初から組み込まれている。ESA の Data flow は「FLEX は Sentinel-3 の 100 km 前方を飛ぶので、ESA と Eumetsat が協力してこのタンデム配置を維持する」と書き、SP-1330/2 は「FLEX の運用系は Sentinel-3 の運用系から軌道と計画のデータを受け取って編隊飛行を整合させる」としています。
ESOC の運用記事(9月11日)が伝えているのは、この編隊がもたらす運用側の負荷です。2機の打ち上げ自体は 2009 年の Herschel・Planck でも経験があるが、あのときは1つの合同チームだった。今回は「2つの独立したチームが並行して運用し、しかも衛星がほぼ同じ軌道を飛ぶ」のが本当の難しさだと、Sentinel-3C の飛行運用ディレクターは語っています。合同シミュレーションでは「打ち上げ機の投入誤差で軌道が予測とずれ、両機の接近リスクを評価している最中に別の異常を注入し、さらに火災訓練を重ねる」という想定まで演習したそうです。
ESA の打ち上げ記事によれば、FLEX は最初 Sentinel-3A とタンデムを組み、のちに Sentinel-3C が 3A と入れ替わります。Sentinel-3 ミッションキットも「3C はコミッショニングとタンデム期間を経て 3A を置き換える」としています。Sentinel-3A は 2016 年打ち上げで、Sentinel-3 の設計寿命は 7 年(燃料は 12 年分)。3C が 3A の役割を引き継ぐことで、FLEX の 3.5 年の運用期間を通してタンデムの相手が確保される形です。SP-1330/2 の選定時には、FLEX を Sentinel-3 とは別の高度の位相調整軌道に投入し、相対ドリフトで所定の位置に着いてから高度を合わせる手順が示されています。今回の実際の編隊組み立ての手順と日程は、9月16日時点で ESA の公表がなく、本記事では書きません。
🔬 6. FLORIS の中身 — 2台の分光器・二重スリット・偏光スクランブラ
FLORIS(Fluorescence Imaging Spectrometer)は FLEX 唯一の観測機器で、イタリアの Leonardo が開発しました。ESA の「The instrument」と Fraunhofer IOF のリリースから、信号の通り道に沿って構成を追います。
(回転カルーセル:太陽拡散板/黒体)"] --> B["偏光スクランブラ
(二重 Babinet・500〜780 nm 帯域通過)"] B --> C["共通の望遠鏡"] C --> D["二重スリット(Fraunhofer IOF 製)
85 µm 幅 × 44.15 mm・±1 µm"] D --> E1["高分解能 Offner 分光器
O2-A・O2-B:0.3 nm/0.1 nm"] D --> E2["低分解能 Offner 分光器
500〜780 nm 全域:約 2 nm/0.65 nm"] E1 --> F1["冷却・裏面照射 CCD
(前面に線形可変フィルタ)"] E2 --> F2["冷却・裏面照射 CCD"]
- 偏光スクランブラが最初にあります。開口を定義し、500 nm 未満と 780 nm 超を帯域通過フィルタで落とし、二重 Babinet スクランブラで偏光を消す。ESA は「わずかな偏光感度でも、ミッションが要求する極めて精密な蛍光測定を損なうため必須」としています(MRD は偏光した光への応答差を 1〜2% 以内と要求)
- 二重スリットで光を2台の分光器に分けます。飛行方向に沿って光学的に分離し、折り返し鏡に帯域通過膜を付けて、それぞれの分光器に必要な波長だけを送る。スリットは Fraunhofer IOF がシリコンウェハのリソグラフィで作ったもので、幅 85 µm・長さ 44.15 mm・許容偏差 ±1 µm。ずれると検出器に入る光が多すぎたり少なすぎたりして評価を損なう、と IOF は説明しています。組み込み精度は 5 µm 未満、スリットの平面度 10 µm 未満、同じアセンブリの2枚の鏡は表面粗さ 0.3 nm rms(原子1〜2個分)
- 2台の Offner 分光器(等倍・低歪み)が、ホログラフィック回折格子で波長を分けます。ESA は「反射太陽光に埋もれた弱い蛍光信号を検出するのに必要な、正確な波長分離」のためと書いています
- 検出器は高分解能・低分解能とも冷却した裏面照射型 CCD。高分解能側の前には線形可変フィルタを置いて迷光を抑えます。迷光は「吸収帯の埋め戻しとして蛍光と誤解釈されうる」ため、MRD は特に厳しく扱っています(迷光の残差を蛍光の放射計誤差割り当ての 20% 以下に)
- 校正ユニットは回転カルーセルで、太陽光を当てたランバート拡散板で絶対放射校正、黒体でダーク取得を行います。波長校正は大気と太陽の吸収線を観測して行うので、専用の光源を積んでいません(ESA)。測る対象である吸収線そのものが、波長の基準になっている設計です
放射計としての要求は、選定時で絶対精度 5%(一様な植生シーンで 3%+残留偏光 1%+迷光 1%)、1周回内の安定性 0.5%(SP-1330/2)。ESA は「軌道上で測定の信頼性を保証するために」この校正系を置いた、と説明しています。衛星本体は Thales Alenia Space(フランス)がプライムで、3軸安定・アルミパネル構造・展開式太陽電池 950 W(寿命末期)・57.6 Ah のリチウムイオン電池。FLORIS は温度制御した光学ベンチに載り、「非常に弱い蛍光信号を反射光から分離するために不可欠」な高い指向精度と安定性を姿勢制御系が提供します(ESA「The satellite」)。
ミッション諸元
| 項目 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 名称 | Fluorescence Explorer(FLEX)・Earth Explorer 第8号 | ESA |
| 目的 | 植生蛍光の全球測定・蛍光マップから光合成活動と植物ストレスを定量化。300 m × 300 m の月次全球マップ | ESA Facts and figures |
| 機器 | FLORIS:500〜780 nm。O2-A(759〜769 nm)・O2-B(686〜697 nm)で 0.1 nm サンプリング、クロロフィル吸収帯(600〜677 nm)・PRI 帯(500〜600 nm)で 2.0 nm、他は 0.5〜0.65 nm | ESA Facts and figures |
| 観測幅・地上分解能 | 150 km・約 300 m | ESA The satellite |
| 衛星 | 小型プラットフォーム(Myriade evolution の機械構成+Sentinel-3 のアビオニクス)。軌道上寸法 1.5 × 4.9 × 1.6 m | ESA Facts and figures |
| 質量 | 400 kg | ESA |
| 電力 | 950 W(EOL)展開式太陽電池+57.6 Ah(EOL)Li-ion | ESA |
| 寿命 | 3.5 年+コミッショニング 3 か月(南北両半球で最低3回の季節サイクルを押さえる)。消耗品は最大5年分 | ESA Facts and figures/The satellite |
| 軌道 | 太陽同期・高度 814 km・傾斜角 98.64°・27 日回帰・降交点通過 10:00 頃。1周約 100 分 | ESA Facts and figures/Data flow |
| 観測範囲 | 概ね南緯 56° 〜 北緯 75° | ESA The satellite |
| タンデム | Sentinel-3 の 40〜100 km 前方(6〜15 秒先) | ESA Facts and figures/The satellite |
| 通信 | 科学データは X バンド、TT&C は S バンド。いずれもスバールバル(ノルウェー)の地上局 | ESA |
| 運用・処理 | 運用 ESOC(ダルムシュタット)・処理 ESRIN(フラスカティ)・開発 ESTEC(ノールトウェイク) | ESA |
| プライム/機器 | Thales Alenia Space(仏)/FLORIS は Leonardo(伊)。約 40 社の欧州企業 | ESA・TAS |
筆者は電子工作・組み込みが本業で、分光器も衛星も触ったことはありません。ここに書くのは手元の計測の感覚に引き寄せた受け止めです。事実は上の節、ここから先は意見として読んでください。
FLEX の資料を読んでいちばん腑に落ちたのは、「信号を取り出すために、信号が無い場所を探している」という設計の向きでした。弱い信号を測るとき、筆者の手元でまずやるのは増幅ではなく、プローブの先をグラウンドに落として「何も入れていないときにオシロが何を表示するか」を見ることです。それが分からないと、その上に乗った小さな変化を信じられない。FLORIS が黒体でダークを取り、吸収線の底という「太陽光がほぼ来ない波長」を測定点に選んでいるのは、桁も対象も違いますが、同じ順序に見えます。Roman の記事ではコロナグラフを「邪魔なほうを先に消す」設計として受け止めましたが、FLEX は消す装置すら積んでいない。地球の大気がすでに 761 nm を消していて、そこに合わせて分光器を置いた——ノッチフィルタを自作せず、環境にもともとある切れ込みを使う発想です。
もう一つ、往復の光子と片道の光子を「通ってきた道」で見分けるという説明は、筆者にはロックインアンプの話と重なって見えました。ロックインは信号側に変調という「印」を付けて、印の無い背景を落とす。FLEX は印を付けられない代わりに、蛍光が生まれつき持っている印(大気の吸収を1回分しか受けていない)を使っている。筆者はロックインアンプを実際に使ったことがないので、これは資料を読んだ範囲での重ね合わせです。ただ、「分解能は細かいほど良いのではなく、分離が最も効く 0.3 nm を探してその3倍でサンプリングする」という報告書の段落は、ADC のサンプリングレートを帯域から逆算するときの手つきそのもので、こういう文書を一次で読める時代はありがたい、と素直に思いました。
まとめ
- 2026年9月15日 03:21 CEST(日本時間 10:21)、ESA の FLEX と Copernicus Sentinel-3C が Vega-C VV30 で同時に打ち上げられ、ESOC が両機の初信号を受信。Vespa アダプタで縦に積み、Sentinel-3C が先に、FLEX が離昇から 116 分後(Avio)に分離。ESA は「2つの地球観測ミッションを別々の軌道へ運べる能力を示した」と位置づけ
- FLEX は光合成の蛍光を軌道から測る ESA 初の衛星。植物は吸収した光の約 8 割を光合成に使い、残りを熱と蛍光で捨てる。蛍光は 685 nm(PS II)・740 nm(PS I)の2つのピークをもち、葉が萎れる前にストレスで上にも下にも動く
- 測り方の核心は酸素吸収線の底。往復の反射光が大きく減る O2-A(759〜769 nm)・O2-B(686〜697 nm)で、片道の蛍光が「埋め戻し」として残る。酸素は空間・時間で一定で予測できるので谷の深さを基準にできる。分解能 0.3 nm が分離の最適値で、その 1/3 の 0.1 nm でサンプリング。最も暗い 759〜762 nm の SNR 要求 115 が放射計のサイズを決めた
- Sentinel-3 の 40〜100 km 前方(6〜15 秒先)を並走し、OLCI から大気補正、SLSTR から冠層温度を借りる。Level-1c の定義からして Sentinel-3 のデータが組み込まれた、単独では成立しない設計。まず 3A と組み、のちに 3C が交代
- これからの数日は LEOP、続いて約3か月のコミッショニング。データの公開時期は 9 月 16 日時点で ESA の発表が見当たらない(後述の FAQ)
よくある質問(FAQ)
Q. なぜ「蛍光」で植物の健康が分かるのですか?
植物が吸収した光のエネルギーは、光合成・熱・蛍光の3つに配分されます(最適条件では約 8 割が光合成・ESA)。蛍光はこの配分から漏れた分なので、光合成の効率が変われば蛍光も変わります。ESA によれば、干ばつや霜では蛍光は減る傾向、除草剤のような損傷では逆に増える。だから蛍光単独では「良い/悪い」を決められず、FLEX は Sentinel-3 の温度や植生情報と組み合わせて解釈します。それでも反射光(緑さ)と違って機能そのものの出力に近く、葉が萎れる前に変化が出るのが強みです。
Q. 植物が「光っている」ということですか?
違います。蛍光は太陽光を吸収した直後に、その一部を少し長い波長で再放射する現象で、太陽光が無ければ出ません(ESA「10の意外な事実」)。ホタルのように自分でエネルギーを使って光る生物発光とは根本的に別で、葉は暗闇では光りません。FLEX の軌道が降交点通過 10:00 頃の太陽同期に選ばれているのも、植物が光合成をしている午前中の光の下で測るためです。
Q. なぜ酸素の吸収帯で測るのですか? 太陽のフラウンホーファー線や水蒸気の吸収帯ではだめですか?
ESA の選定報告書(SP-1330/2)は3つを比べています。太陽由来のフラウンホーファー線は吸収が弱く、解像するのに非常に高い分解能と SNR が要るため粗い空間分解能でしか使えない。水蒸気の吸収帯は空間的・時間的な変動が大きく、そのばらつきが蛍光のばらつきを上回りうる。酸素は大気中でほぼ一定・鉛直にも均一で、吸収が強く、地表気圧の影響も補正できる。しかも 687 nm と 761 nm という位置が蛍光の放射範囲に重なる——という消去法で O2-A・O2-B が選ばれました。
Q. Sentinel-3 が無いと FLEX は成り立たないのですか?
FLEX のプロダクト定義上はそうです。ESA の「Data products」では、Level-1c が FLORIS と Sentinel-3(OLCI・SLSTR)の放射輝度を共通グリッドに並べたもの、Level-2 は3機器の測定から求めるものと定義されています。FLORIS の波長範囲(500〜780 nm)だけでは大気補正に要るエアロゾル・水蒸気の情報が足りず、蛍光の解釈に前提となる冠層温度も測れません。だから同じ軌道の 6〜15 秒前を飛び、まず Sentinel-3A、のちに 3C とタンデムを組みます。
Q. FLEX のデータはいつから使えますか?
ESA の Facts and figures はコミッショニング期間を 3 か月としていますが、最初のデータ公開の時期は 2026 年 9 月 16 日時点で ESA の発表を確認できていません。ESA Earth Online の FLEX ページには、将来のプロダクト形式に慣れるためのテスト製品が先行して置かれています。選定時の報告書は「Level-2 まで処理した科学データを 24 時間以内に利用可能にする」を運用目標として書いていますが、これも実運用の確定値ではありません。
Q. 日本の農業や研究に関係ありますか?
観測範囲は概ね南緯 56°〜北緯 75°(ESA)で日本列島は入りますし、全球の月次マップが目的なので日本も対象です。ただし空間分解能は 300 m × 300 m で、日本の個々の圃場(多くは 300 m より小さい)を1枚ずつ見る用途には粗い、というのは筆者の意見です。ESA が挙げているのは炭素循環・干ばつや熱波への植生の応答・生態系の生産性など、地域〜全球スケールの用途です。日本の機関による利用計画の有無は本記事では確認できていません。
Q. Sentinel-3C は FLEX のためだけの衛星ですか?
違います。Sentinel-3C は Copernicus の Sentinel-3 シリーズの3号機で、海面温度・海色・海面高・海氷・陸域温度・山火事・内水面の高さなどを系統的に測る運用衛星です(Sentinel-3 ミッションキット)。3A(2016年)・3B(2018年)の後継として長期観測を継続するのが主目的で、FLEX とのタンデムはその一部です。コミッショニング後の運用は Eumetsat に移ります。
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参考
本記事の一次資料は front matter の references に列挙しています(ESA の打ち上げ記事・Facts and figures・ミッションキット・SP-1330/2・MRD v3.1・Sentinel-3 ミッションキット・Earth Online、Avio・Thales Alenia Space・Fraunhofer IOF のプレスリリース)。X(旧 Twitter)の投稿は出典に使っていません。