はじめに

いつも買っているマイコンボードの値段が、自分とは縁のなさそうな「AIブーム」で動いています。

2026年に入って、Arduino も Raspberry Pi も、メモリ価格の高騰を理由に値上げしました。どちらも公式にそう述べています。センサーを1つ読んでクラウドに送るだけの工作をしている人まで、データセンターの需要のあおりを受けている、という話です。

値上げそのものは事実ですが、電子工作の作り手にとっては「買うか、待つか」だけが問題ではありません。用途によっては、そもそもメモリ価格の影響を受けにくい作り方があります。

📌 この記事の3行まとめ
  • Arduino は UNO Q を2026年7月6日から値上げ。 2GB が $44→$59、4GB が $59→$79。理由は公式の言葉で「この6ヶ月だけでメモリ部品コストが2倍以上
  • Raspberry Pi は2026年4月1日に値上げ済み。 Pi 4/5 の 4GB が +$25、8GB が +$50、Pi 5 16GB が +$100 など。理由は「LPDDR4 の価格がこの1年で7倍
  • 大容量メモリを積む Linux SBC ほど影響が大きい。 一方、内蔵メモリで動くマイコン(ESP32 / STM32)中心の用途なら、価格高騰の影響は構造的に小さい

1. 🟢 Arduino が値上げした

2026年6月26日、Arduino の Chief Product Officer である Marcello Majonchi 氏が、公式ブログで UNO Q の値上げを予告しました。実施は7月6日からです。

製品 旧価格 新価格
Arduino UNO Q(2GB) $44 $59
Arduino UNO Q(4GB) $59 $79

理由は、公式ブログにはっきり書かれています。

メモリ価格は、AI アプリケーションの根強い需要に後押しされて高騰を続けている。この6ヶ月だけで、当社のメモリ部品コストは2倍以上になった。

さらに、こう続けています。

メモリの供給・価格に当面回復の兆しがないなか、このコストを吸収し続けることはもはや不可能だ。

企業の値上げ告知としては珍しく率直な書きぶりです。「もう吸収しきれない」という言い方に、部品コストの上がり方の急さが表れています。

なお、UNO Q 以外の製品への波及があるかは、この告知では触れられていません。

Arduino UNO Q を実機で試したい場合は、2GB のスターターキットが入手しやすい構成です。

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2. 🔴 Raspberry Pi も値上げしていた

同じことが、少し早く Raspberry Pi でも起きていました。2026年4月1日、Raspberry Pi はメモリ価格の上昇を理由とする一連の値上げを公式に発表しています。

主な変更は次のとおりです。

製品 変更
3GB Raspberry Pi 4(新設) $83.75 で新登場
Raspberry Pi 4 / 5(4GB) +$25
Raspberry Pi 4 / 5(8GB) +$50
Raspberry Pi 5(16GB) +$100
Raspberry Pi 500 +$50
Raspberry Pi 500+ +$150
Compute Module 4 / 4S / 5(各容量) +$11.25〜+$100
AI HAT+ 2 +$50

理由は、これも公式の言葉です。

メモリの価格が上がり続けており、Raspberry Pi 4 と 5 に使われている LPDDR4 DRAM の価格は、この1年で7倍になった。

注目したいのは、メモリ容量が大きいモデルほど値上げ幅が大きい点です。16GB モデルの +$100 と 4GB モデルの +$25 を比べれば、値上げの正体がメモリそのものの価格であることがはっきり分かります。3GB という中途半端な容量のモデルが新設されたのも、メモリ量で価格を刻む必要が出てきたからだと読めます。

💡 LPDDR4 とは

LPDDR4(Low Power DDR4)は、低消費電力向けの DRAM 規格です。スマートフォンや小型ボードなど、電力に制約のある機器で広く使われています。Raspberry Pi 4 / 5 が基板に載せているのもこれです。「1年で7倍」というのは、この部品そのものの調達価格の話です。

いま Raspberry Pi を新調するなら、技適取得済みのスターターキットが手軽です。用途に合わせて容量を選べます。


3. 🏭 なぜ上がるのか — AIデータセンターとメモリ

Arduino は「AI アプリケーションの需要」、Raspberry Pi は「LPDDR4 の価格上昇」を挙げています。この2つは根っこでつながっています。

因果を1本の流れにすると、こうなります。

flowchart TD A["AI データセンターのメモリ需要増"] --> B["DRAM / LPDDR4 の価格高騰"] B --> C["ボードの原価が上昇"] C --> D["Arduino が UNO Q を値上げ"] C --> E["Raspberry Pi が Pi 4 / 5 などを値上げ"]

この流れの先で実際に起きた値上げを両社まとめると、次のとおりです(いずれも公式発表・本文で述べた数値)。

会社 製品 値上げの内容
Arduino UNO Q(2GB) $44 → $59
Arduino UNO Q(4GB) $59 → $79
Raspberry Pi Pi 4 / 5(4GB) +$25
Raspberry Pi Pi 4 / 5(8GB) +$50
Raspberry Pi Pi 5(16GB) +$100
Raspberry Pi Pi 500+ +$150
Raspberry Pi 3GB Pi 4(新設) $83.75

生成AIの学習と推論には、膨大な量の高速メモリが要ります。AIデータセンターがメモリを大量に確保しにいくと、メモリ全体の需給が逼迫し、価格が押し上げられます。 その波が、スマホや小型ボード向けの DRAM にまで及んでいる——というのが、両社の値上げの背景にある構図です。

要するに、AIブームのコストの一部を、電子工作の作り手が部品価格という形で払っていることになります。

このデータセンター需要そのものが何なのか、いつまで続くのかについては、別の記事で掘り下げています。値上げの「上流」にあたる話です。


4. 🧭 電子工作者は、どう付き合うか

値上げは事実ですが、「今すぐ買うか、待つか」だけが選択肢ではありません。 ここで一つ、設計側の視点を挟みます。

影響の大きさは「メモリをどれだけ積むか」で変わる

今回の値上げは、大容量の DRAM を基板に載せる製品ほど直撃します。Raspberry Pi の値上げ幅が容量に比例していたのが、その証拠です。

逆に言えば、外部の大容量 DRAM に依存しない作り方なら、メモリ価格高騰の影響は構造的に小さいということです。ESP32 や STM32 のようなマイコンは、内蔵の SRAM とフラッシュを中心に動き、Linux SBC のように GB 単位の DRAM を積むことを前提としていません。

用途で切り分ける

「Raspberry Pi をやめてマイコンにしろ」という話ではありません。 用途によって適材が違う、というだけの話です。

こういう用途なら マイコン(ESP32 / STM32)で足りる こういう用途は Linux SBC(Raspberry Pi)が要る
センサーを読んで定期的にクラウドへ送る デスクトップ Linux 環境そのものが必要
モーターやリレーの制御 複数プロセス・コンテナを走らせる
ボタン・表示・単機能の組み込み 重い画像処理・ローカルでの AI 推論
電池で長期間動かしたい Python の広いエコシステムをフルに使う
ネットワーク越しにデータを飛ばすだけ Web サーバーやデータベースを常駐させる

「Linux が要るのか、マイコンで足りるのか」を最初に切り分けると、そもそも値上げの影響を受けにくい側で作れる場合があります。センサーの値をクラウドに送るだけのノードに Linux SBC を使っていたなら、マイコンに降ろせる余地は大きいはずです。

「降ろす」ときの足がかり

当サイトには、マイコン側で組む場合の記事がそろっています。

もちろん、Linux でしかできないことをやるなら SBC を買うのが正解です。その場合でも、必要なメモリ容量を見極めれば、値上げ後でも過不足のない構成を選べます。


まとめ

  • Arduino は UNO Q を2026年7月6日から値上げ。 2GB $44→$59、4GB $59→$79。公式理由は「6ヶ月でメモリ部品コストが2倍以上」
  • Raspberry Pi は2026年4月1日に値上げ済み。 Pi 4/5 の 4GB +$25、8GB +$50、Pi 5 16GB +$100、Pi 500+ +$150 など。3GB モデルを新設。公式理由は「LPDDR4 がこの1年で7倍」
  • 背景は共通で、AIデータセンターのメモリ需要が DRAM 全体の価格を押し上げている
  • 影響の大きさは、その製品が積むメモリ量に比例する。 大容量 DRAM の Linux SBC ほど直撃を受ける
  • 用途で切り分けるのが実務的。センサー収集・制御・電池駆動などはマイコンで足り、値上げの影響を受けにくい。Linux が要る用途は SBC を選び、必要な容量を見極める

よくある質問(FAQ)

Q1. Arduino の値上げはいつからですか?

2026年7月6日からです。2026年6月26日に Arduino が公式ブログで予告しました。対象は UNO Q(2GB が $44→$59、4GB が $59→$79)です。

Q2. Raspberry Pi はいくら上がりましたか?

2026年4月1日の発表で、Pi 4/5 の 4GB が +$25、8GB が +$50、Pi 5 の 16GB が +$100、Pi 500+ が +$150 などです。あわせて 3GB の Raspberry Pi 4 が $83.75 で新設されました。

Q3. なぜ値上げしたのですか?

両社ともメモリ価格の高騰を理由に挙げています。Arduino は「AI アプリケーションの需要でメモリ部品コストが6ヶ月で2倍以上」、Raspberry Pi は「LPDDR4 DRAM の価格が1年で7倍」と公式に述べています。

Q4. これからも上がりますか?

Arduino は「メモリの供給・価格に当面回復の兆しがない」と述べています。今後の価格を約束するものではありませんが、すぐに元へ戻る見込みは公式には示されていません。

Q5. Raspberry Pi 6 を待てば安くなりますか?

今回参照した Raspberry Pi の公式発表には、Raspberry Pi 6 の時期に関する記載はありませんでした。 待てば安くなるかどうかを、公式情報から判断できる状態ではありません。

Q6. 値上げを避けるにはどうすればいいですか?

「避ける」より「用途に合った側で作る」のが実務的です。センサー収集・制御・電池駆動といった用途なら、大容量 DRAM を積まないマイコン(ESP32 / STM32)で足りることが多く、メモリ価格の影響を受けにくくなります。一方、デスクトップ Linux 環境や重い推論が必要なら、SBC を選んで必要容量を見極めるのが現実的です。


参考