🧭 「ESP32」と名の付くものが多すぎる

ESP32 で何か作ろうと思って通販サイトを開くと、たいてい最初にこうなります。

ESP32、ESP32-S3、ESP32-C3、ESP32-C6、ESP32-H2、ESP32-P4。同じ「ESP32」なのに型番が違う。値段も違う。どれも「ESP32」と名乗っているせいで、上位互換なのか別物なのかが分からない。

先に結論を書くと、多くは上位互換ではなく、別々の用途に振った別のチップです。数字が大きいほうが偉い、という並びになっていません。ESP32-C3 は ESP32 の後継ではないし、ESP32-P4 には Wi-Fi が載っていません。

選ぶときは 「これを作りたいなら、これ」 から入るのが早道です。スペックの比較表は後半にありますが、表から入ると項目が多すぎて余計に迷います。まず、作りたいものを決めてください。

📌 迷ったときの3行
  • とりあえず Wi-Fi でセンサの値を飛ばしたいだけ — ESP32-C3。安くてピンも足りる
  • 画面・カメラ・音を扱いたい — ESP32-S3。ピンが多く、カメラと LCD の口がある
  • 電池で年単位で動かしたい/Matter や Zigbee をやりたい — ESP32-H2(Wi-Fi は載っていません)

🗺️ まず、5つの系統で捉える

型番を1つずつ覚える必要はありません。最初の無印を別にすれば、あとはアルファベット1文字で性格が決まっています。

系統 無線 何が厚いか 代表
無印(ESP32) Wi-Fi + Bluetooth Classic + LE 最初のモデル。現行ラインナップでは、Classic が載る唯一の系統 ESP32
S 系 Wi-Fi。S2 は Bluetooth なし/S3 は LE あり GPIO の本数と周辺回路。USB OTG・カメラ・LCD のインタフェースを持つ ESP32-S2 / S3
C 系 Wi-Fi + Bluetooth LE(C6 / C5 は 802.15.4 も) RISC-V シングルコアの小型構成。世代ごとに無線で差をつけている ESP32-C3 / C6 / C5
H 系 Wi-Fi なし。 802.15.4 + Bluetooth LE 消費電力。公式も low-power / ultra-low-power と位置づけている ESP32-H2
P 系 無線なし 演算とマルチメディア。最大400MHz、MIPI のカメラ・ディスプレイ ESP32-P4

ここでいちばん大事なのは、H 系と P 系には Wi-Fi が無いことです。「ESP32 なんだから Wi-Fi は当然あるだろう」と思って買うと、そこで止まります。

そして ESP32-S2 には Bluetooth がありません。 S3 には Bluetooth LE がありますが、同じ S 系でも無線は違います。 型番の近さで判断しないでください。

💡 ワード解説:IEEE 802.15.4

表に出てくる 802.15.4 は、近距離・低速・低消費電力の無線通信の規格です。Wi-Fi(802.11)とも Bluetooth とも別系統の、独立した規格だと思ってください。ESP32 系での通信速度は 250Kbps、帯域は 2.4GHz です。

大事なのは、これ単体では機器と会話できないことです。802.15.4 が決めているのは電波をどう飛ばすかという土台の部分(物理層と MAC 層)だけで、その上に載せるプロトコルが別に要ります。

  • Thread — 802.15.4 の物理層・MAC 層の上で動く、IP ベースのメッシュ規格
  • Zigbee — 同じく 802.15.4 を土台にした、スマートホーム向けのメッシュ規格
  • Matter — 機器どうしの共通言語。Thread の上でも Wi-Fi の上でも動きます(802.15.4 専用ではありません)

つまり 802.15.4 / Thread / Zigbee / Matter は並列の選択肢ではなく、下から積み上がった層です。チップの仕様に「802.15.4 対応」とあれば、Thread や Zigbee を動かす土台がある、という意味になります。

ここが選び方に効いてきます。 ESP32-H2 に Wi-Fi が無いのは削られたからではなく、802.15.4 で電池駆動の端末をやる役割だからです。そして ESP32-C6 や(発表済みの)ESP32-S31 が注目されるのは、Wi-Fi と 802.15.4 の両方を1チップで持てるためです。ばらまく側とまとめる側を、1種類のチップで賄えます。

💡 Bluetooth Classic と Bluetooth LE は別物です

表に「Bluetooth Classic」と書いた行がありますが、「Bluetooth」と呼ばれているものは、中身が2種類あります。

  • Bluetooth Classic(BR/EDR) — 昔からあるほう。ワイヤレスイヤホン、スピーカー、ゲームパッド、カーオーディオなど、音や連続したデータを流す機器で使われています
  • Bluetooth LE(Low Energy) — 後から追加された、電池を食わないほう。ボタン電池のセンサやビーコンのように、たまに小さなデータを送る用途向けです

やっかいなのは、この2つに互換性が無いことです。LE しか載っていないチップに Classic の機器は「見えません」。名前が同じなので同じものだと思われがちですが、つなぎたい相手がどちらなのかで、選ぶチップが変わります。

もう一つ、CPU の命令セットも系統によって違います。 無印と S 系は Xtensa、C 系・H 系・P 系は RISC-V です。

💡 ワード解説:Xtensa と RISC-V

命令セット(ISA) は、CPU が理解できる命令の種類と形式を決めた取り決めです。同じ C 言語のコードでも、最終的に吐き出される機械語は命令セットごとに別物になります。

  • Xtensa — Cadence(旧 Tensilica)が設計した32bit の命令セットで、ライセンスを受けて使う商用の設計資産です。用途に合わせて命令や実行ユニットを足せる構成可能プロセッサとして提供されています
  • RISC-V — スイスの非営利団体 RISC-V International が管理する オープンな標準の命令セットです。同団体は「open, royalty-free ISA」と説明しており、ライセンス料なしで誰でも使えます。Espressif 自身も ESP32-C3 を「open-source RISC-V architecture に基づく」と説明しています

自分に影響があるか、という話をします。 ESP-IDF や Arduino IDE から使うぶんには、ほぼ意識せずに済みます。 ターゲットを指定すれば、対応するコンパイラが自動で選ばれるためです(ESP-IDF は Xtensa 用の xtensa-esp-elf と RISC-V 用の riscv32-esp-elf を別々に持っています)。

効いてくるのは、次のような場合です。

  • アセンブリを直接書いている — 命令が違うので、そのままでは通りません
  • プリコンパイル済みのバイナリライブラリを使っている — ソースが無ければ、別アーキテクチャ向けには作り直せません
  • アーキテクチャ依存の最適化を使っている — ESP32-S3 のベクトル命令のような、そのチップ固有の機能に寄せたコード

逆に言えば、ESP-IDF の API の範囲で書いてあるコードなら、乗り換えの負担は小さいということです。

なお、Espressif の新しいチップは RISC-V が中心になっています(S31・E22・H21・P4 はいずれも RISC-V)。ただし、「Xtensa をやめる」といった公式の説明は出ていないので、その先は分かりません。


🎯 作りたいものから選ぶ

ここが本題です。上から順に、自分の作りたいものに近いところを読んでください。

温湿度センサの値を Wi-Fi でクラウドに送りたい

ESP32-C3 で足ります。

RISC-V シングルコア 160MHz、SRAM 400KB、GPIO 22本。Wi-Fi は 802.11 b/g/n、Bluetooth 5(LE)。USB Serial/JTAG コントローラが内蔵されているので、USB ケーブル1本で書き込みもデバッグもできます。別途 USB シリアル変換チップを載せる必要がありません。

センサ1〜2個を I2C でつないで、数分おきに値を投げる。この用途では CPU が仕事をしている時間はごくわずかで、待っている時間のほうが圧倒的に長いからです。

実際、当サイトで ESP32-S3 から Azure へ HTTPS で送ったときの内訳を測ると、こうなりました。

内訳 時間
TLS ハンドシェイク 約1,200〜1,300ms
データ送信 30〜50ms
レスポンス受信 20〜40ms

TLS ハンドシェイクが全体の95%以上です。TLS ハンドシェイクというのは、通信を暗号化する前に相手と鍵を取り決めるやり取りのことで、データを1バイトも送らないうちに終わっている工程です。ここが大半を占めている以上、CPU を速いチップに替えても体感は変わりません。 詳しい測定は ESP32でgRPC vs JSON 実測比較|シリアライズ2.7倍速・データ量1/3 にあります。

つまり 「速いチップを買っておけば安心」が、いちばん効かないのがこの用途です。

画面やカメラを扱いたい/ピンが足りなくなりそう

ESP32-S3 です。

Xtensa LX7 デュアルコア 240MHz、SRAM 512KB、GPIO 45本。LCD とカメラのコントローラを内蔵し、ニューラルネットワーク演算や信号処理を加速するベクトル命令を持ちます。USB は OTG と Serial/JTAG の両方があります。

S 系を選ぶ理由は、クロックより先にピン本数であることが多いです。ESP32-C3 の 22本に対して S3 は 45本。LCD をパラレルで叩いて、SD カードを挿して、センサも並べる、となると 22本ではすぐ足りなくなります。

ピンが足りない場合の逃げ道もあります。I/O エキスパンダ(I2C の信号線2本だけで、GPIO を外付けで増やせる IC)を足せば、アドレス違いで最大8個・128本まで増やせます。この手は MCP23017の使い方|I2Cアドレス設定とESP32/Arduino実装例 にまとめてあります。ただし追加した先は I2C の速度で頭打ちになるので、高速に叩きたい信号は本体の GPIO に残してください。

ESP32-S3 で実際にクラウドへ送るところまでは ESP32-S3からAzureへデータを飛ばす!HTTPS POSTとサーバーレス連携の極意 と、ESP-IDF 版の ESP32-S3 × ESP-IDF|cJSONとHTTP ClientでJSONをPOST送信 が具体例です。

電池で長く動かしたい/Matter・Zigbee・Thread をやりたい

ESP32-H2 です。ただし Wi-Fi は載っていません。

RISC-V シングルコア 96MHz、SRAM 320KB、GPIO 19本。無線は Bluetooth 5.3(LE)と IEEE 802.15.4 のみ。Thread 1.3.0 認証コンポーネントであり、Zigbee 認証プラットフォームでもあります。Matter は Thread のエンドデバイス(末端の機器)・ボーダールータ(Thread の網と家庭内 LAN をつなぐ中継役)・ゲートウェイとして使えると公式に書かれています。

Wi-Fi を積まないというのは、機能を削ったのではなくそもそも狙いが違うということです。Wi-Fi はつなぎっぱなしにすると電力を食います。ボタン電池で何年も動かしたいセンサに、Wi-Fi は重すぎる。802.15.4 は、その用途のために作られた低消費電力の無線規格です。

家じゅうにセンサをばらまいて、1台だけ Wi-Fi 付きの機械にまとめさせる。そういう構成を組むときの「ばらまく側」が H 系です。

なお H 系には ESP32-H4 もあります。こちらは RISC-V デュアルコア 96MHz、SRAM 384KB、Bluetooth 5.4(LE)、GPIO 最大40本と、H2 より一回り大きい構成です。

Wi-Fi も 802.15.4 も、両方1チップで欲しい

ESP32-C6 です。

RISC-V シングルコア 160MHz(加えて最大 20MHz の低消費電力コア)、SRAM 512KB、GPIO 30本(QFN40 版)。2.4GHz の Wi-Fi 6(802.11ax)と Bluetooth 5.3、そして IEEE 802.15.4 を全部載せています。

つまり H2 の「ばらまく側」と、Wi-Fi でまとめる側の、両方をこれ1つでやれるということです。Matter 対応のスマートホーム機器を自作するなら、これがいちばん素直な選択肢になります。

低消費電力コアが別に載っているのも C6 の特徴で、メインコアを止めたまま最低限の処理を続けられます。

5GHz の Wi-Fi につなぎたい

ESP32-C5 です。ESP32 シリーズで 2.4GHz と 5GHz の両方に対応する数少ないモデルです。

RISC-V シングルコア 240MHz(低消費電力コアは最大 48MHz)、SRAM 384KB、GPIO 29本。デュアルバンドの Wi-Fi 6(802.11ax) に加えて Bluetooth 5(LE)、802.15.4 も持ちます。Thread 1.4 と Zigbee 3.0 に対応します。

2.4GHz は電子レンジも Bluetooth も近所の Wi-Fi も同じ帯域を使っていて、集合住宅では特に混みます。「動くけど、たまに落ちる」の原因が電波環境だったとき、5GHz に逃げられるのは大きいです。

USB 機器そのものを作りたい

ESP32-S2ESP32-S3 です。どちらも USB OTG を持っているので、パソコンから見て「キーボード」「マウス」「メモリ」といった USB デバイスとして振る舞えます。

ESP32-S2 は Xtensa LX7 シングルコア 240MHz、SRAM 320KB、GPIO 43本、フルスピード USB OTG。Bluetooth は載っていません。 Wi-Fi だけでよく、ピンをたくさん使いたい場合に効いてくる構成です。静電容量タッチが14チャネルあるのも S2 と S3 の特徴です。

なお 書き込みのためだけの USB なら、C3 や C6 の USB Serial/JTAG で十分です。OTG が要るのは「USB デバイスとして認識させたい」ときだけです。

映像を処理したい/とにかく演算性能が欲しい

ESP32-P4 です。ただし 無線はまったく載っていません。

RISC-V デュアルコア 最大 400MHz(AI 命令拡張と、小数の計算を専用回路で行う単精度 FPU 付き)、加えて最大 40MHz の低消費電力コア。SRAM 768KB、GPIO 55本。MIPI-CSI と MIPI-DSI、つまりカメラ入力用と画面出力用の専用インタフェースを持ち(CSI 側には画像処理を行う ISP を内蔵)、表示・カメラとも最大 1080p、H.264 エンコードは 1080p@30fps まで対応します。USB OTG 2.0 HS、Ethernet、SDIO Host 3.0 も内蔵です。

無線が要るなら、ESP32-C/S シリーズを SPI/SDIO/UART でつないでコンパニオンチップとして使う構成が公式に案内されています。つまり P4 は「2チップ構成の頭脳側」という位置づけです。

作例をなぞって、確実に動かしたい

無印の ESP32 が、いまでも堅い選択肢です。

Xtensa LX6 デュアルコア(シングルコア版もあり)最大 240MHz、SRAM 520KB はシリーズ最大、GPIO 34本。Wi-Fi は 802.11 b/g/n。そして Bluetooth v4.2 BR/EDR と Bluetooth LE の両方に対応しています。

Bluetooth Classic(BR/EDR)が使えるのは、現行ラインナップでは無印の ESP32 だけです。 PS4 コントローラのような Classic 前提の機器をつなぎたいなら、ここを外せません。実例は ESP32とPS4コントローラーで作るモータードライバ|IR2104 Hブリッジと2ch制御 にあります。

そしてもう一つ、世に出ている作例と日本語情報の量が圧倒的です。初めて触るなら、詰まったときに答えが見つかることの価値は小さくありません。

当サイトの作例も無印 ESP32 のものが多くあります。基板を起こすところまでやるなら ネットワーク対応デジタル時計の作り方(1)プリント基板設計編プリント基板実装からアラーム機能まで、変わり種なら ESP32で作るニキシー管時計|NTP自動同期・MCP23017制御・昇圧回路と基板設計 です。

✅ どれを選んでも、最初の一歩は同じ

Arduino IDE から始めるなら ESP32 Arduino IDE セットアップ手順【2026年版】|インストールからLチカまで、ESP-IDF で本格的にやるなら VS Codeで始めるESP-IDF環境構築ガイド|最小構成でHello Worldまで が最短です。

配線で毎回悩まないように、テストボードを1枚作っておくのもおすすめです(ESP32汎用テストボードの作成)。


📊 スペック比較表

数字で確認したくなったときのための表です。すべて Espressif 公式のデータシートおよび製品ページの記載によります。

ESP32 ESP32-S2 ESP32-S3 ESP32-C3 ESP32-C6 ESP32-C5 ESP32-H2 ESP32-P4
CPU Xtensa LX6
デュアル/シングル
Xtensa LX7
シングル
Xtensa LX7
デュアル
RISC-V
シングル
RISC-V
シングル
RISC-V
シングル
RISC-V
シングル
RISC-V
デュアル
最大クロック 240MHz 240MHz 240MHz 160MHz 160MHz 240MHz 96MHz 400MHz
低消費電力コア ULP コア 20MHz 48MHz 40MHz
SRAM 520KB 320KB 512KB 400KB 512KB
+LP 16KB
384KB
+LP 16KB
320KB 768KB
Wi-Fi 802.11 b/g/n
2.4GHz
802.11 b/g/n
2.4GHz
802.11 b/g/n
2.4GHz
802.11 b/g/n
2.4GHz
Wi-Fi 6
2.4GHz
Wi-Fi 6
2.4/5GHz
なし なし
Bluetooth v4.2 BR/EDR
+ LE
なし 5(LE) 5(LE) 5.3(LE) 5(LE) 5.3(LE) なし
802.15.4 あり あり あり
GPIO 34 43 45 22 30(QFN40) 29 19 55
USB OTG
フルスピード
OTG +
Serial/JTAG
Serial/JTAG Serial/JTAG Serial/JTAG Serial/JTAG OTG 2.0 HS

太字は、その項目でシリーズ内の特徴になっている値です。

表に出てこない現行モデルもあります。ESP32-C2(ESP8684)は RISC-V 120MHz・SRAM 272KB の小型・低コスト向けで、公式ページは ESP8266 からの移行先として案内しています。ESP32-C61 は RISC-V 160MHz・SRAM 320KB で、2.4GHz の Wi-Fi 6 を安く使えるようにした位置づけです。GPIO 本数は製品ページに記載がありませんでした。

⚠️ 表の値の読み方

GPIO 本数はパッケージによって変わります。ESP32-C6 は QFN40 で30本、QFN32 で22本です。ESP32-C3 も型番によって 22本と 16本があります。

また、この表はチップ単体の仕様です。実際に買うのは開発ボードやモジュールで、その基板上で LED や USB 変換に取られているピンは自由に使えません。ピン数がぎりぎりの設計をするなら、必ずボード側の回路図も確認してください。


🔭 これから来るもの

Espressif は2026年に入ってから、RISC-V を軸にした新しいチップを続けて発表しています。 どれもまだ通販で買える段階ではありませんが、出てきたときに何が変わるのかは押さえておく価値があります。

発表日 型番 何が来るのか
2026年1月19日 ESP32-E22 同社初の Wi-Fi 6E。RISC-V デュアルコア 500MHz を積んだ無線コプロセッサで、2.4/5/6GHz のトライバンド、160MHz 幅、2×2 MU-MIMO、1024-QAM で最大 2.4Gbps。Bluetooth LE 5.4 と Classic(BR/EDR)の両方を持つ。ホストとは PCIe 2.1/SDIO 3.0 で接続する
2026年3月3日 ESP32-H21 RISC-V 最大 96MHz、SRAM 320KB、GPIO 最大19本。オンチップ DC-DC を積み、RX 動作電流 約8.2mA、ライトスリープ 9μA、ディープスリープ 5μA。ESP32-H2 の低消費電力を突き詰めた版
2026年3月26日 ESP32-S31 320MHz デュアルコア RISC-V に Wi-Fi 6・Bluetooth 5.4(LE + Classic BR/EDR)・802.15.4・1000Mbps Ethernet MAC を統合。GPIO 60本、JPEG コーデックと2Dアクセラレータ内蔵
2026年6月12日 ESP32-E22(続報) Wi-Fi CERTIFIED 6E を取得。Linux ドライバを GitHub でオープンソース公開

まだ買えない、という点は共通しています

この3つはいずれも、公式に一般販売の時期も価格も公表されていません。 公式発表に書かれているのは「サンプルの希望や問い合わせは Espressif のカスタマーサポートへ」という案内までです。ESP32-E22 についてはエンジニアリングサンプルの提供が案内されていますが、これは個人が通販で買う話とは別です。

とはいえ、ESP32-S31 は開発ボード2種と専用の開発者ポータルまで公開されているので、「発表だけして実体がない」段階は過ぎています。

どこが効いてくるのか

ESP32-S31 は、いま2チップ必要な構成が1チップになるのがいちばん大きい変化です。ESP32-S3 には Ethernet も 802.15.4 も載っていないので、有線 LAN をつなぐにも Thread をやるにも外付けが要ります。S31 はそこを1つにまとめてきました。

ただし、クロックが 240MHz から 320MHz に上がることには期待しすぎないほうがよさそうです。 前述のとおり、クラウドへときどき送るだけのノードでは時間の95%以上が TLS ハンドシェイクで、CPU を速くしても縮まない領域があります。

S31 のスペックと、当サイトの ESP32-S3 実測データとの突き合わせは ESP32-S31 発表|Wi-Fi 6・イーサネット搭載、ESP32-S3と何が違うのか に詳しくまとめてあります。

ESP32-H21 は、電池で動かす機器の稼働時間を伸ばす方向です。ディープスリープ 5μA という数字は、ボタン電池で数年を狙う設計で効いてきます。

ESP32-E22 は、ESP32 単体で完結する話ではありません。 無線コプロセッサ(RCP)なので、ホストとなる別のプロセッサが要ります。ESP32-P4 のように無線を持たないチップと組み合わせる構成が想像しやすいところです。

そしてもう一つ、Bluetooth Classic の選択肢が増えます。 前半で書いたとおり、いま Classic が使えるのは無印の ESP32 だけですが、ESP32-S31 と ESP32-E22 はどちらも公式に Classic(BR/EDR)対応をうたっています。 S31 の製品ページは、その理由としてイヤホン・スピーカー・車載機器といった従来機器との互換性を挙げています。発売されれば、Classic 前提の工作で無印以外を選べるようになります。


📌 まとめ

  • ESP32 シリーズは上位互換の並びではありません。 数字の大小ではなく、系統(無印 / S / C / H / P)で性格が分かれています
  • H 系と P 系には Wi-Fi が載っていません。 ここを取り違えると、買ってから作り直しになります
  • Bluetooth Classic が使えるのは、現行ラインナップでは無印の ESP32 だけです。Classic 前提の機器をつなぐなら、いまのところ選択肢は1つです(発表済みの ESP32-S31 と ESP32-E22 は Classic に対応しています)
  • Wi-Fi でデータを投げるだけの工作なら、速いチップを選んでも体感は変わりません。 当サイトの実測では通信時間の95%以上が TLS ハンドシェイクでした
  • 迷ったら、まずピン本数を数えてください。 クロックより先に足りなくなるのはたいていピンのほうです
  • 発表済み・未発売のモデル(ESP32-S31 / E22 / H21)は、公式に販売時期も価格も出ていません。買える段階になったら、S31 は「2チップが1チップになる」という形で効いてきます

型番の多さは、裏を返せば やりたいことに合わせて削ぎ落とした選択肢が用意されているということでもあります。作りたいものが決まっていれば、選ぶのはそれほど難しくありません。


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参考