はじめに

2026年10月13日、Apple が Apple Home Collection と Apple HomeView を発表しました。Home Collection は LG Electronics と Schneider Electric と組んで設計したカメラ・サーモスタット・温湿度センサー・ドアベル・ドアロックの機器群です。HomeView は 7 インチの画面を持つ、家の操作盤を兼ねたスマートディスプレイです。

技術者として目を引くのは、発表文にある 「Every device supports Thread」 の一文です。全機種が Thread に対応し、Wi-Fi が落ちてもつながりを保つ、と書いています。スマートロックは Matter と Aliro に対応し、UWB(Ultra Wideband)で持ち主との距離を測って、近づくと鍵を開けます。しかも中核の機能はネットがなくても家の中だけで動く、とされています。

Matter・Thread・Aliro・UWB は、どれも数年かけて標準化されてきた規格です。それが一つの製品群にそろって載りました。この記事のゴールは、4 つの規格がそれぞれどの層で何を受け持つのかを整理し、ESP32-H2/C6 などで自作の機器を作るとき、どの層を自分で作り、どの層を規格に任せればよいかが見えるようになることです。製品の紹介ではなく、規格の側から読んでいきます。

📌 この記事の3行まとめ
  • Home Collection は全機種が Thread 対応。ロックは Matter と Aliro に対応し、UWB で距離を測って近づくと開く。中核の機能はネットなしで動く
  • Matter はアプリ層の共通言語、Thread は 802.15.4 の無線メッシュ、Aliro はスマホを鍵にする規格、UWB は電波の飛行時間で距離を測る技術。それぞれ別の層を受け持つ
  • 自作するなら、Matter over Thread は ESP32-H2、Wi-Fi と Thread の両方なら ESP32-C6。UWB はどちらにも載っていない。米国などで 12 月から販売で、日本は販売国に含まれていない

🧱 1. Matter と Thread の役割分担とは

「言葉」と「道路」は別の規格

スマートホームの規格は、層に分けると見通しがよくなります。

層 規格 受け持つこと
用途 Aliro スマホやウォッチを鍵として使う手順と資格情報
アプリ Matter 「点けろ」「何度か」「施錠中か」を伝える共通の言葉
ネットワーク Thread/Wi-Fi IPv6 のパケットを機器まで届ける
無線 IEEE 802.15.4/802.11 電波の物理層と MAC 層
設定・測距 BLE/NFC/UWB 最初の設定(コミッショニング)や距離の測定

CSA(Connectivity Standards Alliance)は Matter を「IP をベースにしたつながりのプロトコル」と説明し、最初の仕様は Wi-Fi と Thread のネットワーク層の上で動き、コミッショニングには Bluetooth Low Energy を使うと書いています。つまり Matter は Thread 専用ではありません。Wi-Fi の上でも動きます。

Thread Group は Thread を「電力効率の高い IEEE 802.15.4 の MAC/PHY をベースにし、インターネットを低消費電力の末端機器まで延ばすもの」と説明しています。機器どうしがパケットを中継し合うメッシュで、Apple の開発者向けページも「Thread 対応の機器がお互いにパケットを転送し合うことで、届く範囲が広がり、冗長性が生まれる」と書いています。

たとえるなら、Matter は共通の言葉、Thread は家の中に張りめぐらせた道路です。同じ言葉を、Wi-Fi という道路で運ぶこともできます。

ボーダールーターが二つの道路をつなぐ

Thread のメッシュは、そのままでは家の Wi-Fi とつながりません。橋渡しをするのが Thread ボーダールーターです。OpenThread の説明では、ボーダールーターは Thread と Wi-Fi などの別のネットワークの間で情報を転送し、Thread ネットワークを外とつなぐための設定も行います。

Apple の環境では、Apple TV 4K・HomePod(第 2 世代)・HomePod mini が Thread 対応のホームハブで、他社の Thread ボーダールーターも使えます(Apple サポート)。

flowchart TB P["iPhone"] -->|"Wi-Fi"| W["Wi-Fi ルーター"] W -->|"Wi-Fi"| H["ホームハブ
HomePod mini など
(Thread ボーダールーター)"] H -->|"Thread"| L["ドアロック"] H -->|"Thread"| T["サーモスタット"] L -->|"Thread メッシュ
で中継"| S["温湿度センサー"]

Thread の機器には役割があります。OpenThread の資料によると、無線を常に入れて中継を担える機器(FTD)と、親機にだけ話しかける機器(MTD)があり、MTD の中にはふだんは無線を切っていて、ときどき起きて親機に問い合わせる Sleepy End Device があります。電池で動くセンサーは、たいていこの形を取ります。

Wi-Fi が落ちても動く理屈

Apple は「Thread に対応していることで、Wi-Fi の接続が落ちてもつながりを保ちやすくなる」と書いています。理由は、上の図から読み取れます。

  • Thread のメッシュは、Wi-Fi のアクセスポイントを経由しない別の無線網です。ロックとセンサー、ハブとロックの間は、Wi-Fi ルーターが止まっても Thread で話せます
  • ハブが Thread の無線を直接持っているので、ハブで動く自動化は Wi-Fi ルーターに頼らずに機器へ届くと思われます
  • Apple サポートによると、iPhone 15 Pro 以降はハブなしでも Thread の機器を操作できます。iPhone 自身が Thread の無線を持つためです

逆に、外出先からの操作やクラウドの機能は、インターネットへの経路が要ります。Thread が守るのは「家の中の機器どうし」のつながりです。発表では、カメラは本体の記録領域を持っていて、Wi-Fi が落ちても録画を続けるとされています。ロックは「完全にローカルで動作し、インターネット接続がなくても中核のアクセス機能は動き続ける」と書かれています。

もう一つ、地味ですが実用的な記述があります。家の Wi-Fi を変えたとき、機器が自分でネットワークの認証情報を更新するというものです。スマートホームでよくある「ルーターを買い替えたら全部つなぎ直し」という手間を減らすための機能です。


🔑 2. Aliro とは — スマホを鍵にする標準

Aliro は、CSA が 2026年2月26日に 1.0 仕様を公開した、アクセス制御のための通信プロトコルと資格情報の標準です。スマートフォンやウェアラブルを鍵の代わりに使い、ドア側の読み取り機(リーダー)と通信して扉を開けます。

CSA のリリースと FAQ から、要点を拾います。

  • 何を標準化するか: スマホ・ウォッチ(ユーザー側の機器)と、電子錠・リーダー(ドア側の機器)の間のやり取り。メーカーが違っても扉の前で動くようにする
  • 暗号: 非対称暗号の枠組みで、ユーザー側の機器とリーダーの間の信頼を確立する
  • ネットがなくても動く: 地下駐車場やエレベーターのように通信が届かない場所でも使えることを想定している
  • 無線: タッチで開ける NFC(13.56 MHz)、ユーザーの操作で少し離れて使う Bluetooth LE、そして手をふさがずに開ける Bluetooth LE+UWB。UWB は既定でチャネル 9(7.75〜8.25 GHz)
  • ウォレット: Apple・Google・Samsung のモバイルウォレットが対応を表明している
💡 Aliro と Matter の関係

CSA の FAQ は、Aliro と Matter は補い合う規格で、お互いに依存しないと説明しています。Matter は機器の操作(施錠・解錠の命令、状態の通知)を受け持ち、Aliro は「扉の前でスマホを鍵として使う」部分を受け持ちます。リーダーや機器は、どちらか一方だけでも両方でも対応できます。今回の LG のロックは、両方に対応した例です。


📏 3. UWB 測距とは — 電波の「飛んだ時間」で距離を測る

ToF(Time of Flight)

LG のロックは「UWB で、ユーザーがどれだけ近いか、ドアに近づいているかを判断する」とされています。UWB が距離を測る基本は、電波が飛ぶのにかかった時間(ToF) です。

電波は光と同じ速さで進むので、距離は次の式で求まります。

d = c \times \mathrm{ToF}

c \approx 3 \times 10^8 m/s なので、1 ns で約 30 cm 進みます。センチメートル単位で距離を測るには、ナノ秒より細かく到着時刻を決める必要があります。FiRa Consortium のホワイトペーパーは、帯域がとても広いインパルス無線の UWB は、正確な距離測定に向いた波形だと説明しています。帯域が広いほど、パルスの立ち上がりが鋭くなり、到着時刻を細かく決められるからです。

DS-TWR — 時計を合わせずに往復時間で測る

2 台の時計をナノ秒以下で合わせるのは大変です。そこで UWB では、往復の時間を使います。FiRa のホワイトペーパーは、スマホ(イニシエーター)とドアのリーダー(レスポンダー)が 3 回メッセージをやり取りする DS-TWR(Dual-Sided Two-Way Ranging) の流れを示しています。

sequenceDiagram participant I as スマホ(イニシエーター) participant R as ドアのリーダー(レスポンダー) I->>R: 1. 測距の開始 R->>I: 2. 応答 I->>R: 3. 最終メッセージ Note over I,R: それぞれが自分の時計で
「往復」と「折り返し」の時間を測る

それぞれの機器は、自分の時計で「送ってから返事が来るまで( T_{round} )」と「受けてから返すまで( T_{reply} )」を測ります。FiRa のホワイトペーパーにある式は次のとおりです。

\mathrm{ToF} = \frac{T_{round1} T_{round2} - T_{reply1} T_{reply2}}{T_{round1} + T_{round2} + T_{reply1} + T_{reply2}}

どの時間も、測る機器の中で完結しています。2 台の時計の時刻を合わせる必要がない、というのがこの方式の利点です。

BLE の RSSI との違い

Bluetooth LE で距離を推定する簡単な方法は、RSSI(受信信号の強さ) を見ることです。ただ、強さは距離だけでなく、体や壁でさえぎられたか、スマホの向き、反射などで大きく変わります。さらに、離れた場所の電波を中継して増幅すれば、遠くの鍵を「近くにある」と見せかけることもできてしまいます。

ToF は、この点で性質が違います。電波は光より速く進めないので、中継をはさむと遅れが足されて遠く見える方向にしかずれません。FiRa のホワイトペーパーは、扉の解錠のような用途では「測距の結果が常に実際の距離の上限になっていること(distance-bounding)」が求められるとし、そのために暗号で作った STS(Scrambled Timestamp Sequence) という信号を使うと説明しています。STS が使い回されない Dynamic STS では、第三者が信号を予測したり、あとで再生したりするのが難しくなります。

💡 Bluetooth にも位相で測る方法がある

Bluetooth にも、RSSI ではなく電波の位相で距離を測る Channel Sounding があります。仕組みは Nordic nRF54LC10A の記事 で解説しています。Aliro 1.0 が無線として挙げているのは NFC・Bluetooth LE・Bluetooth LE+UWB で、Channel Sounding は挙がっていません。


📲 4. NFC コミッショニングとは

コミッショニングは、買ってきた機器を自分の家のネットワークと Matter のネットワーク(ファブリック)に参加させる手続きです。Matter では、もともと QR コードなどで設定情報を読み取り、Bluetooth LE で機器とやり取りして参加させます。iOS は、設定コードを読むと Wi-Fi か Thread の認証情報を自動で機器に渡します(Apple 開発者向けページ)。

NFC の扱いは、Matter の版で段階を踏んでいます。

版(公開) NFC でできること
1.4.1(2025年5月) 設定情報を NFC タグに埋め込み、QR コードの代わりに読む。参加の手続きそのものは BLE
1.6(2026年6月) 双方向の NFC 通信で、手続き全体を行える。機器に電源が入りきる前でもよい

CSA は 1.6 の例として、天井に付ける前の電球や、電源を入れる前の壁スイッチを、スマホをかざすだけで設定できることを挙げています。

Apple の発表は、Home Collection の機器が 「iPhone でのワンタップ」 で設定を始められ、HomePod の設定に似ていると書いています。注記には「NFC ペアリングには最新の OS の iPhone が必要」とあります。ただし、この NFC ペアリングが Matter 1.6 の NFC コミッショニングと同じものかどうかは、一次資料に書かれていません。


📦 5. 発表の中身

発表された機器を、無線と販売の条件で整理します。価格は米国での開始価格です。

機器 無線・規格(一次の記述) 価格 販売地域・時期
LG Smart Deadbolt Lock Thread・Matter・Aliro・UWB $349.95 米・加。12月から
LG カメラ 4 機種(ドアベル含む) Thread $199.95〜$399.95 米・加・英。12月から
LG/Schneider サーモスタット Thread・Matter 各 $199.95 米・加。12月から
LG/Schneider 温湿度センサー Thread・Matter 各 $39.95 米・加。12月から
Apple HomeView(据え置き/壁掛け) Wi-Fi 6E・Bluetooth 6.0・Thread(仕様ページ。HomeKit または Matter 対応の Thread アクセサリのみ) 各 $299 豪・加・印・NZ・英・米で 11月13日発売
  • Home Collection は 12 月から apple.com などで販売され、一部の機器は 2027 年初めからです
  • HomeView は 10月13日に予約開始。シンガポールは 10月15日に予約開始、南アフリカは販売代理店経由で、どちらも 11月13日から販売されます。EU では販売しません(Siri AI が EU の iOS で使えないため)
  • 日本は、どちらの販売国にも含まれていません。

カメラの映像は、家のハブか Private Cloud Compute で処理し、iCloud+ に 10 日分を暗号化して保存するとされています。ロックは、ドアベルと組み合わせて「誰が来たかを見て、その場で開ける」使い方ができます。HomeView の仕様ページには無線として Wi-Fi 6E・Bluetooth 6.0・Thread が並び、対応するのは「HomeKit または Matter 対応の Thread アクセサリのみ」と注記されています。ただし、HomeView が Thread のボーダールーターになるとは、発表文にも仕様ページにも書かれていません(2026年10月20日時点)。


🛠️ 6. 作る側から読む — ESP32-H2/C6・nRF54L で Matter 機器を作る

どの層を自分で作るか

規格がここまでそろうと、自作機器で自分が書くのは、Matter のアプリ層の「中身」(センサーの値、リレーの動き)だけに近づきます。下の層は SDK と規格が受け持ちます。

チップ 無線 向いている役割
ESP32-H2 BLE+802.15.4(Wi-Fi なし) 電池で動く Matter over Thread の機器
ESP32-C6 Wi-Fi 6+BLE+802.15.4 Matter over Wi-Fi の機器、Thread の機器、別の SoC と組んでボーダールーター
nRF54L 系 BLE(Channel Sounding)+802.15.4 小型・低消費電力の Thread/Matter 機器、Thread の RCP

Espressif は ESP32-H2 を「Thread 1.3.0 の認証コンポーネント」とし、Matter の Thread 末端機器・Thread ボーダールーター・Matter ゲートウェイの用途を挙げています。ESP32-C6 については、Matter 対応の Wi-Fi 末端機器と Thread 末端機器を作れ、別の Espressif の SoC と組めば Matter ゲートウェイや Thread ボーダールーターにもできると説明しています。SDK はどちらも ESP-Matter(ESP-IDF の上で動く)です。nRF54L 系の位置づけは nRF54LC10A の記事 にまとめています。

flowchart TB A{"何を作るか"} -->|"電池で動くセンサー"| H2["ESP32-H2
Matter over Thread"] A -->|"コンセント給電の機器"| C6["ESP32-C6
Matter over Wi-Fi"] A -->|"扉の鍵"| K["Matter の機器+
Aliro のリーダー
(NFC は外付け)"]

チップごとの違いは ESP32 シリーズの選び方 で、802.15.4・Thread・Matter が層として積み上がる関係と合わせて整理しています。H 系の新しい SoC については ESP32-H4 の記事 があります。

鍵を作りたい場合は、2 つの規格に分けて考えます。施錠・解錠の命令や状態の通知は Matter のドアロックとして作り、スマホを鍵にする部分は Aliro のリーダーとして作ります。Espressif は 2026年7月に esp-aliro SDK を公開していますが、ESP32 は NFC を内蔵しておらず、当時の対応は NFC のみでした(Aliro SDK の記事)。UWB は ESP32-H2/C6 にも nRF54L 系にも載っていないので、今回のロックのような「近づくと開く」を作るには UWB のチップが別に要ります。

Apple Home に自作機器をつなぐ条件

一次資料から分かる範囲を並べます。

  • iPhone だけでも追加できる: iOS 18 以降の iPhone なら、ハブなしで Matter の機器を追加・操作できます。iPhone 15 Pro 以降はハブなしで Thread の機器も操作できます。ただし Apple は、よりよく使うためにホームハブを置くことを勧めています(Apple サポート)
  • Thread の機器にはボーダールーター: Thread の機器は、Thread 対応のハブ(Apple TV 4K・HomePod 第 2 世代・HomePod mini)か、他社の Thread ボーダールーターを前提にしています(同)
  • ホームアプリが扱える種類: エアコン・ブリッジ・照明・ロック・コンセント・スイッチ・サーモスタット・ブラインド・センサー(人感・照度・開閉・温度・湿度)(同)
  • 開発中の機器: Silicon Labs の手順書には、開発版のファームウェアを入れた機器をホームアプリに追加すると「Uncertified device(認証されていない機器)」と表示されるが、そのまま追加を続けられる、と書かれています。Apple 自身の文書にこの動作の説明は見当たりませんでした
  • 配布・販売するなら認証: Apple は、Matter の機器を配布・販売する場合は CSA の認証を受ける必要がある、としています。ESP-Matter の文書によると、認証には CSA の会員になってベンダー ID を取り、認定の試験機関で試験を受けます。「Works with Apple Home」のバッジは、Matter の認証を受けた機器向けのガイドラインに従って使います

自分の家で試すぶんには、ESP-Matter のサンプルを ESP32-C6 に書き込み、Matter over Wi-Fi で iPhone から追加するのが、いちばん部品の少ない入口です。Thread で試すなら、HomePod mini などのボーダールーターを用意して ESP32-H2 に進む、という順番になります。


🔧 技術者の所感

ここからは筆者の意見です。

今回の発表でいちばん面白かったのは、製品そのものより、発表文がそのまま規格の地図になっていることでした。アプリ層は Matter、無線は Thread、鍵は Aliro、距離は UWB、設定は NFC。数年前なら各社が独自に作っていた部分が、全部、名前のある標準に置き換わっています。

自作する側から見ると、これは追い風です。ESP32-H2 で温湿度センサーを作れば、Apple の新しいサーモスタットと同じ言葉で、同じ道路を通って話せる機器になります。部屋ごとの温湿度を読むセンサーは、今回まさに Matter 対応の独立した製品として売られる種類です。手元の基板で作ったセンサーを、メーカー製と並べて同じアプリで見られる、というのはなかなか楽しいことです。

一方で、UWB は手作りの機器にとってまだ一段遠い技術です。マイコンに載っておらず、STS の鍵管理まで含めると、作り込む範囲が一気に広がります。まずは Matter と Thread で家の中の機器をつなぎ、鍵は NFC の Aliro から始める、というのが現実的な順番だと思います。

日本ではまだ買えませんが、規格はどこでも同じです。製品が届く前に、規格の側で手を動かしておけるのが、標準がそろってきたことのいちばんの価値だと感じています。


✅ まとめ

  • 2026年10月13日、Apple は LG・Schneider と組んだ Home Collection と、7 インチの HomeView を発表した。Home Collection は全機種が Thread 対応で、Wi-Fi が落ちてもつながりを保ちやすい
  • Matter はアプリ層の共通言語、Thread は 802.15.4 の IPv6 メッシュ。ボーダールーター(HomePod mini など)が Thread と Wi-Fi をつなぐ
  • Aliro は 2026年2月に 1.0 が出た、スマホを鍵にする CSA の規格。NFC・BLE・BLE+UWB を使い、Matter とは独立している
  • UWB は電波の飛行時間(ToF)で距離を測る。中継しても近くには見せかけられないので、「近づくと開く」に向く
  • Matter 1.6 は NFC だけでコミッショニングを完結できるようにした。Apple の「NFC ペアリング」がこれと同じかは一次資料に書かれていない
  • 自作なら Matter over Thread は ESP32-H2、Wi-Fi も使うなら ESP32-C6。UWB は別のチップが要る。製品は米国などで 12 月から、日本は販売国に含まれていない

次の一手は、ESP-Matter のサンプルを ESP32-C6 で動かし、iPhone のホームアプリに追加してみることです。そこから ESP32-H2 と Thread に進めば、今回の製品群と同じ道路に自分の機器を走らせられます。


よくある質問(FAQ)

Q: Apple Home Collection や HomeView は日本で買えますか?

A: 発表時点では買えません。Home Collection の販売地域は米国・カナダ(カメラは英国も)、HomeView は豪州・カナダ・インド・ニュージーランド・英国・米国・シンガポール・南アフリカで、日本は含まれていません。

Q: Matter と Thread は何が違うのですか?

A: Matter はアプリ層の規格で、機器の操作や状態を伝える共通の言葉です。Thread は IEEE 802.15.4 の上で IPv6 のメッシュを作るネットワークの規格です。Matter は Thread の上でも Wi-Fi の上でも動きます。

Q: Thread の機器を使うには何が必要ですか?

A: Thread と家の Wi-Fi をつなぐボーダールーターが要ります。Apple の環境では Apple TV 4K・HomePod(第 2 世代)・HomePod mini がその役割を持ちます。iPhone 15 Pro 以降は、ハブなしでも Thread の機器を操作できます。

Q: UWB で距離を測ると、BLE より何がよいのですか?

A: BLE の RSSI(電波の強さ)は、体や壁、向きで大きく変わり、中継して増幅すれば遠くの鍵を近くに見せかけることもできます。UWB は電波の飛行時間で測るので、中継すると遠く見える方向にしかずれません。解錠のように「本当に近いか」が大事な用途に向きます。

Q: ESP32 で UWB の解錠を作れますか?

A: ESP32-H2/C6 には UWB の無線がないので、UWB のチップを別に用意する必要があります。Espressif の esp-aliro SDK は、2026年7月の公開時点で NFC のみの対応でした。

Q: 自作の Matter 機器を iPhone のホームアプリに追加できますか?

A: iOS 18 以降の iPhone なら、ハブなしで Matter の機器を追加できます。Silicon Labs の手順書によると、開発版のファームウェアでは「Uncertified device」と表示されますが、そのまま追加を続けられます。配布・販売する場合は CSA の認証が必要です。


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参考