🔧 使い方

まず動作モードを選びます。

  • 非安定(発振・Lチカ) — 電源を入れっぱなしにすると勝手に点滅し続けるモード。R1・R2・C の3つを使います
  • 単安定(ワンショット) — トリガをかけると決まった時間だけ1回 High になるモード。R1 を R として使い、R2 は使いません

初期値は NE555N の実験記事 で実際に組んだ回路(R1 = R2 = 10kΩ、C = 10µF)と同じです。この定数で約 4.81Hz・デューティ比 66.67% になり、記事の実測値 5.083Hz・66.62% とも部品誤差の範囲で一致します。

いちばん上に大きく出るのが「High の時間」です。非安定モードなら LED が点いている時間、単安定モードならパルス幅そのものを指します。どちらのモードでも意味が変わらないので、モードを切り替えながら比べられます。

🔎 計算しているのはこの回路です

非安定モードで計算しているのは、555 の定番中の定番であるこの結線です。

NE555Pを使った無安定マルチバイブレータの回路図。R1・R2・C1がタイミングを決め、OUT端子に330ΩとLEDがつながっている

無安定マルチバイブレータ。図は NE555N(CMOS版555タイマーIC)の使い方 より

時間を決めているのは R1・R2・C1 の3つだけで、これがそのままツールの3つの入力欄です。図の R1 = 10kΩ・R2 = 10kΩ・C1 = 10µF は、ツールの初期値と同じ値になっています。

図の部品 ツールの欄 役割
R1(VCC → 7番) R1 充電経路のうち、放電時に DISCH の電流を制限する側
R2(7番 → 6・2番) R2 充電にも放電にも使われる。周波数への効きがいちばん大きい
C1(6・2番 → GND) C 電圧が 1/3 VCC と 2/3 VCC を往復する主役
C2(0.01µF) 使わない 5番 CONT ピンのバイパス。時間には関係しない
C5(0.1µF) 使わない 電源のパスコン
R3・D1 使わない 出力を見るための LED と電流制限抵抗

この「使わないコンデンサ」で混乱しやすいので、先に整理しておきます。回路図に出てくる3つのコンデンサのうち、周波数を決めているのは C1 だけです。C2 は基準電圧にノイズが乗るのを防ぐためのもの、C5 は電源のパスコンで、どちらも大きくしても遅くなりません。逆に C1 を変えれば、R をいじらなくても周波数はまるごと変わります。

📐 なぜ 1.44 なのか

555 の中では、コンデンサ C の電圧が 1/3 VCC と 2/3 VCC の間を往復 しています。充電は R1 と R2 を通って、放電は R2 だけを通って行われます。

コンデンサ電圧が1/3VCCと2/3VCCの間を三角波状に往復し、それに同期して出力がHigh・Lowに切り替わるタイミングチャート

上がコンデンサ電圧、下が出力。上端 2/3 VCC で折り返して放電に、下端 1/3 VCC で折り返して充電に切り替わる。図は NE555N(CMOS版555タイマーIC)の使い方 より

上のグラフの「上りの1本」が tH、「下りの1本」が tL です。カーブがまっすぐではなく寝ているのは、RC 充電が指数関数だからです。

RC 回路の充電は指数関数なので、1/3 VCC から 2/3 VCC まで充電するのにかかる時間を解くと、きれいに ln2(≈ 0.693)倍の RC が出てきます。

t_H = \ln 2 \times (R_1 + R_2) C \qquad t_L = \ln 2 \times R_2 C

周期はこの2つの和なので T = ln2 × (R1 + 2R2)C、周波数はその逆数です。ここで 1 ÷ ln2 = 1.4427 が出てきます。データシートに載っている 1.44 は「ln2 の逆数」を丸めた値 だったわけです。単安定モードの 1.1 も同じで、0V から 2/3 VCC まで充電する時間を解くと出てくる ln3(≈ 1.0986)の丸め値です。

f = \frac{1}{\ln 2 \,(R_1 + 2R_2)\,C} \approx \frac{1.44}{(R_1 + 2R_2)\,C}

このツールは丸める前の ln2 / ln3 で計算しています。差は 0.2% 未満なので、部品誤差(±5〜20%)に比べれば無視できる範囲です。

⚠️ デューティ比は 50% を下回れない

この基本回路では、充電が R1 + R2 を通るのに対して放電は R2 だけを通ります。つまり 充電経路のほうが必ず長い ので、High の時間は必ず Low の時間より長くなります。

⚠️ R1 を小さくしても 50% にはならない

式のうえでは R1 → 0 の極限で 50% に近づきますが、R1 は放電時に DISCH ピン(7番)とグランドの間の電流を制限する役目も持っています。R1 を小さくしすぎると IC に大電流が流れ込んで壊れるため、実用上は 1kΩ 以上にしてください。このツールも 1kΩ を切ると警告を出します。

点灯より消灯を長くしたい(デューティ比 50% 未満にしたい)場合は、R1 と R2 の間にダイオードを追加して充電経路と放電経路を分離する改造が必要です。

R1 = R2 にすると充電時間がちょうど放電時間の2倍になるので、デューティ比は必ず 2/3 ≈ 66.7% になります。上の初期値がぴったり 66.67% なのはそのためです。

💡 定数を決めるときのコツ

周波数を下げたいときは R2 か C を大きくします。逆に C を小さくしすぎると(数百 pF 以下)、配線の浮遊容量が無視できなくなります。まず C を扱いやすい値に決めて、R で微調整する のが定石です。R2 を可変抵抗にすると、tH と tL が同じ比率で伸び縮みするのでツマミで速度調整ができます。

⚠️ 計算どおりにならない主犯はコンデンサ

組んでみたら周波数が2割ずれていた、という話の原因はたいてい R ではなく C です。抵抗は誤差 ±5% の品でも実測はもっと近いことが多いのに対して、コンデンサは種類によって、そもそも表示どおりの容量が出ないことがあるからです。

① 積層セラミックの DC バイアス特性。 小型で大容量のセラミックコンデンサ(X5R・X7R・Y5V などの高誘電率系)は、直流電圧をかけると容量が減ります。定格 25V の部品に 5V かけただけで容量が2〜3割落ちることも珍しくなく、Y5V 系では半分以下になる例もあります。しかもこの特性はデータシートのグラフを見にいかないと分かりません。555 のタイミング用に「10µF の積セラを買ってきた」で周波数が上振れするのは、たいていこれです。

② 電解コンデンサの誤差と漏れ電流。 アルミ電解の容量誤差は ±20% が普通で、品種によっては −10%/+50% のような非対称な規格もあります。加えて漏れ電流があり、これは 555 から見ると「C と並列に抵抗がぶら下がっている」のと同じです。充電が 2/3 VCC に届きにくくなる方向に効くので、R を大きく・C を大きくして低い周波数を狙うほど誤差が目立ちます

③ 対策はコンデンサの種類を選ぶこと。 タイミング用途で素性がいいのは、フィルムコンデンサ(誤差 ±5% 前後・DC バイアス依存がほぼ無い)と、セラミックなら C0G / NP0 の温度補償系(容量は稼げないが安定)です。大容量が必要で電解を使わざるをえないときは、周波数は可変抵抗で追い込む前提にしておくと現実的です。

✅ ずれの切り分け方

実測が計算とずれたら、まず C を疑って ください。R をテスターで測るのは簡単ですが、C の実力値は測りにくいので、逆算するのが早道です。実測周波数をこのツールに当てはめて C を逆に求めれば、その C が表示値からどれだけ離れているかが分かります。NE555N の実験記事 では計算 4.81Hz に対して実測 5.083Hz(+5.7%)で、これは C が表示より小さめだった側のずれ方です。

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