はじめに

X(旧 Twitter)が、クリエイター向けの報酬制度を大きく作り替えます。従来の Creator Revenue Sharing2026年9月7日で終了し、後継の Original Content Rewards Program(オリジナルコンテンツ報酬プログラム)へ移行します。

新制度の芯は、はっきりしています。AI に丸投げして量産したコンテンツや、コピペ・寄せ集めを対象外にし、「自分の声・専門性・独自の見立て」を反映したオリジナルなコンテンツを評価する——という方向への転換です。インプレッション(表示回数)を稼ぐこと自体より、中身がオリジナルかどうかを報酬の土台に置きます。

これは、当サイトの読者——一次体験や専門知見を自分の言葉で発信する個人——にとって、方向性としては追い風です。生成 AI が普及し、それらしい文章がいくらでも量産できるいま、「オリジナルなコンテンツの価値をどう測るか」は、プラットフォーム共通の課題になっています(AI が日常に入り込む流れは生成AI三つ巴2026でも扱いました)。本記事は、この移行を AI 時代のコンテンツ価値という視点で、X 公式ヘルプの記述をもとに整理します。

一点だけ、先に正直に書いておきます。新制度に参加するための応募資格は、個人にはやや高いハードルです(後述)。方向性の歓迎と、現実のハードルは、分けて見ておく必要があります。

🔄 1. 旧→新で何が変わるのか

まず全体像を、旧制度との対比で示します。

観点 旧:Creator Revenue Sharing 新:Original Content Rewards
報酬の土台 返信欄などのインプレッション/エンゲージメントの重み付け オリジナルコンテンツで qualified された表示
表示のカウント オーガニックなインプレッション Premium ユーザーが Home Timeline で50%以上表示したユニーク表示
主な資格 3か月で500万オーガニックインプレッション+認証フォロワー500+Premium 90日で認証ユーザーの Home Timeline 表示50万以上+認証フォロワー500+Premium
ねらい 表示・反応を増やす オリジナルな中身を増やす

X 公式ヘルプによれば、変更の背景には「報酬のインセンティブが、プラットフォームに新しいオリジナルコンテンツをもたらす方向とずれてきた」という問題意識があります。“インプレ稼ぎ・エンゲージメント乞い"から、“オリジナル重視"への舵切り、と言えます。

移行のスケジュールも押さえておきます(すべて X 公式ヘルプの記述)。

日付 何が起きるか
2026年8月7日 Creator Revenue Sharing の新規受付を停止
2026年9月7日 Creator Revenue Sharing を廃止(既存はこの日まで稼働)。最終支払いは8月14日・8月28日・9月11日ごろ
2026年9月8日 既存メンバーが Original Content Rewards へ申請(apply)開始(自動移行ではありません)

申請は自動ではなく、既存メンバーも改めて申請・審査を受けます。本人確認と支払い方法がすでに済んでいれば再設定は不要で、審査はおよそ3営業日、却下された場合は1回だけ異議申し立てができ、再申請は90日後とされています。

✍️ 2. 「オリジナル」とは何を指すのか

新制度の中心にある「オリジナルコンテンツ」を、X はどう定義しているのか。ここが記事のいちばん大事なところです。

X 公式ヘルプによれば、オリジナルとは、自分で作ったもの(自分で書く・撮る・デザインする・制作する)で、自分の声・視点・専門性を反映したものを指します。重要なのは、論評・分析・文脈付けもオリジナルに含まれるという点です。ニュースを自分の言葉で噛み砕く、自分の見立てを添える、他にない文脈を与える——こうした行為は、たとえ題材が他者の出来事でも、オリジナルとして扱われます。

一方、オリジナルとみなされないもの(対象外)も明確です。

  • コピー:他者のコンテンツをそのまま転載する(ダウンロードして再アップロードする行為を含む)
  • わずかな改変:数語を変える、フィルタや速度を変える、テロップを足す程度
  • 寄せ集め(aggregated):他から集めてまとめただけのもの
  • 他プラットフォームからの転載:よそで公開したものを持ってくるだけ
💡 ワード解説:qualified impressions(qualified された表示)

新制度の報酬は、単なる表示回数ではなく qualified impressions を土台にします。これは、X Premium のユーザーが Home Timeline(ホームのおすすめ等)で、投稿の50%以上を実際に表示した、ユニークな表示を指します。同一アカウントの重複、有料・宣伝、人工的・不正な表示は除外されます。「たくさん表示された」ではなく「質の伴う表示が、オリジナルな投稿に対して起きた」ことを評価する仕組みです。

なお、いわゆる自分の速報・専門的な知見・独自の体験・創作・評論といったものは、この公式定義に自然に当てはまります(ただし X が「この5種類」と分類しているわけではなく、あくまで上記のオリジナル定義の具体例にあたる、という位置づけです)。

🤖 3. AI・コピペの扱い——AI時代のコンテンツ価値

ここが、当サイトの読者にとって最も関わる論点です。X 公式ヘルプは、自動化の手段で作成・投稿されたコンテンツは対象外(qualified impressions を生まない)と明記しています。つまり、AI に丸投げして量産したコンテンツは、この制度では報われない方向です。

加えて、AI 生成物には個別のルールも設けられています。2026年3月3日以降、武力紛争に関する AI 生成動画を、AI によるものと開示せずに投稿すると、90日間の停止、再犯で永久停止とされています。

対象外は他にもあります。収益化のコーチングや「報酬を最大化する方法」に終始する内容、偽情報、有用な Community Note(コミュニティノート)が付いた投稿、露骨・有害なもの、知的財産の侵害などです。継続して資格を保つには、X Premium を維持し、ボットや自動化で偽のエンゲージメントを作らないこと、そしてエンゲージメント乞い(露骨に「いいね/リポスト」を頼む行為)をしないことが求められます。

この設計を、発信する側から見ると筋が通っています。生成 AI でそれらしい投稿が無限に作れる時代に、「人がオリジナルに作ったか」を報酬の条件に据えるのは、薄い量産コンテンツを抑え、一次体験や専門知見を出す人を相対的に浮かび上がらせる方向です。AI が日常の道具になった分(生成AI三つ巴2026)、「オリジナルとは何か」を制度で線引きする動きは、今後ほかでも増えていくのかもしれません。

🚪 4. 応募資格とハードル(正直に)

方向性は前向きですが、参加のハードルは正直に書きます。X 公式ヘルプによる応募資格は次のとおりです。

  • 18歳以上で、制度の対象国に居住日本は対象です)
  • アカウントが good standing(良好な状態)で、個人またはビジネスアカウント(政治・政府系は対象外)
  • X Premium・Premium+・Premium Business のいずれかに加入
  • 直近90日で、認証ユーザーからの Home Timeline インプレッションが50万以上(返信は除外)
  • 認証フォロワーが500以上
  • オリジナルコンテンツを継続的に投稿していること

報酬は隔週払いで、受け取りの最低額は30ドル、支払いは Stripe や X Money を通じ、Stripe の本人確認が必要です。

率直に言って、認証フォロワー500人・90日で50万インプレッションというのは、始めたばかりの個人には高い壁です。X Premium の加入も前提になります。「オリジナルを評価する」という理念は歓迎できても、実際に報酬の土俵に立てるのは、ある程度の規模を持つ発信者から、という現実は押さえておく必要があります。

🧑‍💻 5. 筆者の見方

📌 筆者の見方(事実ではなく筆者個人の見解です)

当サイトも、書いた技術記事を X で告知しています。その立場から見ると、今回の方向性は、正直うれしい部分があります。一次体験や専門知見を、自分の言葉で出す——そういう発信が評価される制度は、コピペや AI 丸投げで量産された薄い投稿に埋もれがちな個人にとって、追い風になりうるからです。AI で「それらしい文章」が無限に作れる時代に、「人がオリジナルに作ったか」を条件に据えるのは、健全な線引きのように思えます。

一方で、冷静にも見ておきたいと思います。認証フォロワー500・90日で50万インプレッション・X Premium 加入というハードルは、個人には決して低くありません。理念に共感できても、実際に報酬の対象になれる人は限られます。そのため筆者は、この制度を「収入源」として狙うより、“オリジナルに作る"という姿勢そのものを続ける後押しとして受け止めています。報酬の有無にかかわらず、自分の体験と見立てを丁寧に書く——そこは変えずにいたいところです。企業の施策の是非を断じるつもりはなく、投資の話をするつもりもありません。一人の発信者としての受け止めです。

まとめ

  • X は Creator Revenue Sharing を2026年9月7日で終了し、後継の Original Content Rewards Program へ移行します(新規受付停止は8月7日、既存の申請開始は9月8日・自動移行ではありません)。
  • 新制度は、自動化(AI)で作ったコンテンツやコピペ・寄せ集めを対象外にし、自分の声・専門性・独自の見立てを反映したオリジナルを評価します。論評・分析・文脈付けもオリジナルに含まれます。
  • 報酬の土台は qualified impressions(Premium ユーザーが Home Timeline で50%以上表示したユニークな表示)。隔週払い・最低30ドル。
  • 応募資格は X Premium 加入・認証フォロワー500・90日で認証インプレッション50万など、個人にはハードルが高めです(日本は対象国)。
  • 芯は、“インプレ稼ぎ・エンゲージメント乞い"から"オリジナル重視"への転換。AI 時代に「オリジナルなコンテンツ価値」をどう測るか、という共通課題への一つの回答です。

AI が日常の道具になる流れは生成AI三つ巴2026、AI が悪用される側面はWord/Copilot の AIワームもあわせてどうぞ。

よくある質問(FAQ)

Q. いつ、何が変わるのですか?

A. Creator Revenue Sharing は2026年9月7日で終了し、後継の Original Content Rewards Program へ移行します。新規受付は8月7日に停止済みで、既存メンバーは9月8日から新制度へ申請できます(自動移行ではありません)。

Q. 既存の参加者は自動で移行されますか?

A. されません。改めて申請と審査が必要です。本人確認と支払い方法がすでに済んでいれば再設定は不要で、審査はおよそ3営業日、却下時は1回だけ異議申し立てができ、再申請は90日後とされています。

Q. AI で作ったコンテンツは報酬の対象になりますか?

A. 対象外です。X 公式ヘルプは、自動化の手段で作成・投稿されたコンテンツは qualified impressions を生まない、と明記しています。さらに2026年3月3日以降、武力紛争に関する AI 生成動画を AI と開示せずに投稿すると、90日停止・再犯で永久停止とされています。

Q. 「オリジナル」に、ニュースの解説や論評は含まれますか?

A. 含まれます。自分で作り、自分の声・視点・専門性を反映していれば、論評・分析・文脈付けもオリジナルです。一方、コピー、わずかな改変(数語変更・フィルタ・テロップ)、寄せ集め、他プラットフォームからの転載は対象外です。

Q. 日本から参加できますか?資格は?

A. 日本は対象国です。応募資格は、18歳以上・X Premium(/+/Business)加入・認証フォロワー500以上・直近90日で認証ユーザーの Home Timeline インプレッション50万以上(返信は除外)・オリジナルの継続投稿など。報酬は隔週払いで最低30ドルです。個人にはハードル高めと言えます。

参考