はじめに:時計のように正確な進化

Linuxディストリビューションの中で不動の地位を築いている「Ubuntu」。その最大の特徴は、時計のように正確なリリースサイクルにあります。2026年4月、新たな長期サポート版(LTS)である 「Ubuntu 26.04 LTS」(開発コードネーム:Resolute Raccoon)がいよいよ姿を現します。

一見すると「いつものUbuntu」に見える26.04ですが、その中身は過去10年で最も野心的なセキュリティアップデートと言っても過言ではありません。数多くの組み込みプロジェクトでLinuxベースのシステムを構築してきた立場から見ても、今回の変更は単なるアップデートの域を超えています。本記事では、デイリービルド(開発版)から判明した驚きの全容を深掘りします。


1. 根幹からの「Rust化」:メモリー安全性の追求

今回のリリースにおける最大の技術的トピックは、システムの基幹部分にプログラミング言語 「Rust」 が本格導入されたことです。

💡 Rustとは?
Rustは、Mozillaが開発した比較的新しいプログラミング言語(初版は2015年)です。最大の特徴は「メモリー安全性」で、従来のC/C++で頻発していたメモリー関連のバグ(バッファオーバーフロー、ダングリングポインタなど)を、コンパイル時に自動検出して防ぎます。パフォーマンスはC言語と同等レベルを保ちながら、安全性が大幅に向上するため、セキュリティが重要なシステムソフトウェアでの採用が急増しています。

sudo-rsの採用:特権実行の安全性を根本から見直す

特権権限を実行する最重要コマンド「sudo」が、メモリー安全性の高いRustで書き直された 「sudo-rs」 へと置き換わります。これにより、C言語由来の脆弱性として長年OSを悩ませてきた「バッファオーバーフロー」などのリスクを根本から排除します。

sudoは文字通り「システムの鍵」。ここに脆弱性があれば、すべてのセキュリティ対策が無意味になります。Rustによる再実装は、理論上「メモリー安全性のバグがコンパイル時に検出される」という強力な保証を持ちます。実際、過去のsudoの脆弱性(CVE-2021-3156、通称"Baron Samedit"など)の多くは、Rustであれば発生しえなかったものです。

組み込みシステムでは、特権分離の設計に相当な神経を使います。リアルタイムOS環境でもユーザー空間とカーネル空間の境界は厳格ですが、sudo-rsのようなメモリー安全なツールが一般OSで標準化されることで、今後はより安全な設計パターンが業界全体に波及していくでしょう。

基本コマンド群のRust実装:日常操作の安全性向上

「ls」「cp」「mv」といった、エンジニアが毎日使う基本中の基本ツール群(GNU Coreutils)にもRust実装(uutils/coreutils)が段階的に導入されます。これは単なるパフォーマンス向上だけでなく、システム全体の堅牢性を底上げするCanonicalの強い意思表示です。

従来のC言語実装は40年以上の歴史を持ち、極めて安定していますが、同時に「未発見の脆弱性」のリスクも抱えています。Rust実装への移行は、コンパイラレベルでの安全性チェックを活用し、次の40年に備えるための戦略的判断と言えます。

個人的には、産業用ロボットのコントローラーでも同様の流れを感じています。リアルタイム性が求められる制御系でも、C/C++からRustへの移行が徐々に進んでおり、安全性とパフォーマンスの両立が現実のものとなりつつあります。

Rustへの移行イメージ図 ▲ C言語からRust実装への移行により、メモリー安全性が飛躍的に向上


2. 脱X11:GNOME 50とWayland専用の未来

Ubuntu 26.04に搭載されるデスクトップ環境 「GNOME 50」 は、一つの時代に終止符を打ちます。

X11の完全排除:40年の歴史に別れを告げる

ついにコアコンポーネントからレガシーな X11(X Window System) のコードが完全に排除されました。1984年に初版がリリースされたX11は、長年Linuxデスクトップを支えてきましたが、その設計思想は現代のセキュリティ要件とは相容れない部分が多くなっていました。

X11の最大の問題は「すべてのアプリケーションが画面全体にアクセスできる」という根本的なアーキテクチャです。これは、キーロガーやスクリーンキャプチャが容易に実装できることを意味します。実際、X11環境では任意のウィンドウの入力を盗聴するツールが簡単に作れてしまいます。

Wayland専用設計:セキュリティ境界の明確化

Waylandは、X11に代わる次世代のディスプレイサーバープロトコルです。2008年から開発が始まり、セキュリティとパフォーマンスを重視した設計により、現代のLinuxデスクトップの標準となりつつあります。

💡 Waylandとは?(ワード解説)
Waylandは、Linuxデスクトップで画面表示を管理する「仕組み」です。従来のX11は1984年の設計で、すべてのアプリが互いの画面を見られてしまう構造でした。Waylandでは各アプリは自分の画面だけを管理し、他のアプリの情報にアクセスできません。スマートフォンのように「アプリごとに厳密に分離された、安全で現代的な画面管理システム」と考えると分かりやすいでしょう。

26.04からは厳格な 「Wayland専用ディストリビューション」 となります。これにより、セキュリティ境界がより明確になり、デスクトップ全体のパフォーマンスと安定性が向上します。

Waylandでは、各アプリケーションは自身のウィンドウ内でのみ描画権限を持ちます。他のアプリケーションの画面内容を覗き見ることはできず、キー入力の傍受も不可能です。これは「最小権限の原則」というセキュリティの基本原則を、デスクトップ環境で実現したものです。

組み込みディスプレイシステムの開発経験から言うと、WaylandはX11よりもはるかにシンプルなプロトコルです。組み込みLinuxボードでGUIを実装する際も、Waylandコンポジターの方が軽量で効率的です。Raspberry PiなどのSBC(シングルボードコンピュータ)でも、すでにWaylandが主流になっています。

NVIDIA GPUの最適化:懸念を払拭する改善

多くのユーザーが懸念していたNVIDIA環境での動作も、描画マネージャー 「Mutter」 へのパッチ適用により改善されました。「ブロックされたフレーム時間」が短縮され、驚くほど滑らかな操作感を実現しています。

これまでWaylandの弱点とされていたNVIDIAドライバーとの互換性問題が、ついに解決の段階に入りました。NVIDIAのプロプライエタリドライバーが「GBM(Generic Buffer Management)」に完全対応したこと、そしてGNOME側の最適化が進んだことで、X11時代と同等以上のパフォーマンスが得られるようになっています。

機械学習やロボットビジョンの開発では、NVIDIA GPUは必須です。CUDA環境との相性も重要なため、このWayland対応の完成度向上は実務上の大きな前進と言えます。

GNOME 50デスクトップ環境 ▲ GNOME 50 + Waylandの組み合わせにより、NVIDIA環境でも滑らかな描画を実現


3. 「鉄壁の守り」:TPM暗号化と耐量子暗号

セキュリティの飛躍的向上は、ユーザーの目に見えない部分でさらに加速しています。

Ubuntu 26.04セキュリティアーキテクチャ ▲ Ubuntu 26.04のセキュリティアーキテクチャ:Rust化、TPM、PQC、権限管理が多層的に機能

TPMを利用したフルディスク暗号化(FDE)

Ubuntu 25.10から導入された TPM(Trusted Platform Module) による暗号化が、26.04で完成形を迎えました。新アプリ 「Security Center」 から、インストール後でもPINやパスワードの変更、ディスクの再暗号化が直感的に行えるようになります。

💡 TPMとは?(ワード解説)
TPM(Trusted Platform Module)は、パソコンのマザーボードに搭載されている小さなセキュリティ専用チップです。暗号化の「鍵」を物理的なハードウェア内に保管することで、ソフトウェアだけの暗号化よりもはるかに安全になります。Windows 11でも必須要件とされており、最近のパソコンには標準で搭載されています。「金庫の鍵を、取り外しできない専用の金庫に保管する」イメージです。

TPMは、マザーボードに搭載された専用のセキュリティチップです。暗号鍵をハードウェアレベルで保護することで、ソフトウェア攻撃からの防御を大幅に強化します。従来のLUKS暗号化では、パスワードさえ入手されれば復号化されるリスクがありましたが、TPMを使用することで「この特定のハードウェア・この特定のOS状態でのみ復号可能」という強力な保護が実現します。

産業用機器でもTPMの採用が進んでおり、ファームウェアの改ざん検知やセキュアブートの実装に欠かせない存在になっています。デスクトップLinuxでこの技術が標準化されることは、セキュリティ水準の大幅な底上げを意味します。

Security CenterアプリUI ▲ 新しい「Security Center」アプリでは、TPM暗号化の管理が直感的に行える

次世代の暗号技術(PQC):量子時代への備え

OpenSSHやOpenSSLが更新され、耐量子計算機暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography) のハイブリッドアルゴリズムが標準で含まれます。

量子コンピュータは、従来のRSAや楕円曲線暗号を理論上短時間で解読できる可能性があります。まだ実用規模の量子コンピュータは存在しませんが、「今暗号化された通信を記録しておき、将来量子コンピュータで解読する」という攻撃シナリオ(Store Now, Decrypt Later攻撃)が現実的な脅威として認識されています。

Ubuntu 26.04では、NIST(米国国立標準技術研究所)が2024年に標準化した ML-KEM(旧名:CRYSTALS-Kyber) などのPQCアルゴリズムが、従来のアルゴリズムと併用(ハイブリッド方式)で実装されます。これにより、量子コンピュータが普及しても通信の安全性が保たれます。

正直なところ、現時点で量子コンピュータによる暗号解読が実用化される時期は不明ですが、暗号化の世界では「移行には10年以上かかる」のが常識です。今から対応を始めるのは、決して早すぎることはありません。

Snapアプリの権限管理:スマートフォン式のセキュリティモデル

スマホのアプリのように、Snapパッケージがハードウェアや特定のフォルダにアクセスしようとする際、ユーザーに許可を求めるプロンプトが表示されるようになります。アプリの「勝手な動き」を完全にコントロール可能です。

これは「Prompting」と呼ばれる機能で、Android/iOSで当たり前になっている権限管理モデルを、デスクトップLinuxに持ち込むものです。カメラ、マイク、位置情報、特定のディレクトリなど、センシティブなリソースへのアクセスは、すべてユーザーの明示的な許可が必要になります。

従来のLinuxでは「アプリは基本的にユーザーと同じ権限を持つ」という前提でしたが、この変更により「ゼロトラストアーキテクチャ」に近い考え方が導入されます。たとえインストールしたアプリであっても、必要最小限の権限しか与えないという原則です。


4. パフォーマンスと利便性の進化

「硬派なセキュリティ」の一方で、使い勝手の面でも嬉しい進化が目立ちます。

統合App Store:3大パッケージ形式の一元管理

ついに 「DEB」「Snap」「Flatpak」 の3大パッケージ形式を、一つのUIで一括管理できるようになります。形式を気にせず最新ソフトをインストール可能です。

これまでLinuxのパッケージ管理は、ディストリビューション独自のパッケージマネージャー(Ubuntuの場合はAPT/DEB)と、新しいユニバーサルパッケージ形式(SnapやFlatpak)が並存し、初心者を混乱させる要因になっていました。

新しいApp Storeでは、バックエンドの形式を意識せず、ユーザーは「欲しいアプリを検索してインストールするだけ」という、本来あるべき体験が実現します。複数のソースから同じアプリが提供されている場合は、最適なものを自動選択、または選択肢を提示してくれます。

開発環境をセットアップする際、これまでは「このツールはDEBで、あれはSnap、それはFlatpak」と覚える必要がありましたが、その煩わしさから解放されます。

AI/機械学習の標準サポート:AMD ROCmのネイティブ提供

AMD製GPU向けの「ROCm(Radeon Open Compute)」パッケージがネイティブ提供されます。これにより、PyTorchやTensorFlowを用いたAI開発環境の構築が数分で完了します。

これまでNVIDIA CUDAの独壇場だった機械学習分野ですが、AMD GPUも徐々にサポートが充実してきました。ROCmは、AMDが提供するオープンソースのGPUコンピューティングプラットフォームで、CUDA相当の機能を提供します。

Ubuntu 26.04では、ROCmが公式リポジトリから直接インストール可能になります。これまでは手動でベンダーリポジトリを追加する必要がありましたが、その手間が不要になります。

個人的には、この変化は大きな意味を持つと考えています。ロボットの画像認識処理や、リアルタイムセンサーデータ解析にGPUを活用する場面が増えていますが、AMD GPUのコストパフォーマンスは魅力的です。Linuxで簡単にセットアップできるようになれば、教育用途や研究開発での採用が加速するでしょう。

最新CPU最適化:amd64v3パッケージの提供

最新世代のプロセッサ向けに最適化された 「amd64v3」 パッケージがオプションで提供され、処理能力を限界まで引き出します。

x86-64アーキテクチャには、実はいくつかの「レベル」があります:

  • x86-64-v1:2003年の初期AMD64(基本互換性)
  • x86-64-v2:2009年頃のNehalem世代(SSE4.2対応)
  • x86-64-v3:2015年頃のHaswell世代(AVX2対応)
  • x86-64-v4:2017年頃のSkylake-X(AVX-512対応)

Ubuntu 26.04では、従来のv1(すべての64bitプロセッサで動作)に加えて、v3向けに最適化されたパッケージが選択可能になります。v3は、AVX2やBMI2などの拡張命令セットに対応しており、特に暗号化処理、マルチメディア処理、科学技術計算で大幅な性能向上が期待できます。

数値計算やシミュレーションを多用する開発現場では、このようなCPU最適化は無視できない差を生みます。特にリアルタイムデータ処理が必要な組み込みシステムでは、数パーセントの性能向上が製品の実現可能性を左右することもあります。


5. その他の注目アップデート

Linux Kernel 6.13の採用(予定)

Ubuntu 26.04には、Linux Kernel 6.13系列が搭載される見込みです。主な改善点:

  • Raspberry Pi 5の完全サポート:組み込み開発者には朗報です
  • 次世代Intelプロセッサ対応:Arrow LakeやLunar Lakeのサポート強化
  • AMD GPU最適化:RDNA 3/4世代の性能向上
  • ファイルシステム改善:Btrfs、XFS、ext4の安定性向上

個人的には、Raspberry Pi 5のサポート完全化が特に嬉しい点です。教育用ロボットや、IoTゲートウェイのプロトタイピングにRaspberry Piは欠かせませんが、最新ハードウェアのサポートが早期に安定することで、開発サイクルが大幅に短縮されます。

GNOME 50の新機能

デスクトップ環境も着実に進化しています:

  • パフォーマンス改善:ウィンドウマネージャーの効率化で、古いハードウェアでも快適に
  • 新しいクイック設定パネル:Wi-Fi、Bluetooth、音量調整などがより直感的に
  • Files(ファイルマネージャー)の刷新:モダンなUI、強化された検索機能
  • バッテリー管理の改善:ノートPCでのバッテリー寿命延長

特にバッテリー管理の改善は、モバイルワークステーションとしてUbuntuを使うエンジニアには朗報です。現場での検証作業や、移動中の開発で、バッテリー駆動時間は死活問題です。


6. 他のLinuxディストリビューションとの比較

Ubuntu 26.04は、他の主要Linuxディストリビューションと比較して、いくつかの明確な差別化要因を持っています。

Fedoraとの比較:安定性vs最新技術

Fedoraは、Red Hat社がスポンサーする先進的なディストリビューションです。Ubuntu 26.04と同様にWayland移行やRust採用に積極的ですが、以下の違いがあります:

項目 Ubuntu 26.04 LTS Fedora(最新版)
リリースサイクル 2年ごと(LTS) 6ヶ月ごと
サポート期間 5〜10年 約13ヶ月
安定性重視度 ★★★★★ ★★★☆☆
最新技術導入 慎重(枯れた技術) 最速(実験的)
企業向けサポート Ubuntu Pro RHEL(有料)

Fedoraは「最新技術を最速で試したい開発者」向けですが、頻繁なアップグレードが必要です。Ubuntu LTSは「長期的に安定した環境を維持したい企業・組織」に最適です。産業用機器の開発では、OSの頻繁な変更は検証コストが莫大になるため、LTSの長期サポートは決定的な利点です。

Arch Linuxとの比較:使いやすさvs自由度

Arch Linuxは「自分で全てを構築する」思想の上級者向けディストリビューションです:

  • Arch Linuxの強み:完全なカスタマイズ自由度、最新パッケージ、ローリングリリース
  • Ubuntu 26.04の強み:インストール10分で完成、企業サポート、初心者でも扱える

Arch Linuxは「Linuxの仕組みを深く理解したい愛好家」向けです。Ubuntu 26.04は「開発や仕事で使うツールとして、すぐに使える環境が欲しい実務家」向けです。趣味のサーバーならArchは楽しいですが、業務で使うシステムなら、トラブル時のサポートやドキュメントの充実度でUbuntuが圧倒的に有利です。

Debianとの比較:親子関係だからこその違い

UbuntuはDebianをベースに開発されていますが、明確な違いがあります:

  • Debianの強み:完全フリーソフトウェア主義、超安定志向、多アーキテクチャ対応
  • Ubuntu 26.04の強み:ユーザビリティ重視、最新ハードウェア対応、商用サポート体制

Debianは「完璧な自由と安定性」を追求します。Ubuntu 26.04は「実用性と利便性」を優先し、プロプライエタリドライバー(NVIDIA等)も標準で含めます。サーバー構築の現場では、Debianは老舗の安心感がありますが、Ubuntuは最新クラウド環境(AWS、Azure、Google Cloud)での最適化が進んでおり、クラウドネイティブな開発には最適です。

Ubuntu 26.04の決定的な差別化要因

  1. 長期サポート(LTS)の信頼性:5年〜10年という業界最長クラスのサポート期間
  2. 企業向けエコシステム:Ubuntu Pro、Landscape、MAAS等の包括的な管理ツール
  3. ハードウェアベンダーとの連携:Dell、HP、Lenovoなどが公式サポート
  4. 日本語情報の豊富さ:日本のコミュニティが最も活発で、トラブル解決しやすい
  5. AIインフラ対応:NVIDIA CUDA、AMD ROCmの最適化が標準

7. Ubuntu 26.04が最適なユーザーと利用シーン

Ubuntu 26.04 LTSは、その特性から特定のユーザー層に特に大きな価値を提供します。

ケース1:ソフトウェア開発者・エンジニア

最適な理由:

  • 開発ツールが標準で充実(gcc、Python、Node.js、Docker等)
  • 統合App Storeで開発環境のセットアップが数分で完了
  • AI/機械学習開発でROCm・CUDAが公式サポート
  • WSL2(Windows Subsystem for Linux)でWindowsとの併用が容易

具体的な利用シーン:

【Webアプリケーション開発】
React + Node.js + PostgreSQLのフルスタック開発環境を、
Ubuntu 26.04上で構築。Dockerコンテナで本番環境と同一構成をローカルで再現。

【機械学習・AI研究】
AMD Radeon RX 7900 XTX + ROCm環境で、PyTorchによる深層学習モデルの訓練。
Jupyter Notebookで分析、VS Codeでコーディング、すべてネイティブLinuxで完結。

【組み込みシステム開発】
Raspberry Pi向けクロスコンパイル環境を構築。
QEMUでARMエミュレーション、実機テストとの連携が容易。

ケース2:サーバー管理者・DevOpsエンジニア

最適な理由:

  • 10年サポート(Ubuntu Pro)で長期運用計画が立てやすい
  • クラウド環境(AWS、Azure、GCP)で公式イメージ提供
  • Kubernetes、Dockerの最適化されたバージョンを提供
  • セキュリティアップデートが自動・定期的

具体的な利用シーン:

【Webサーバー運用】
Nginx + PHP-FPM + MariaDBのLAMP構成で、
WordPress等のCMS基盤を10年間安定運用。
TPM暗号化でデータ保護、Snap権限管理で不正アクセス防止。

【コンテナオーケストレーション】
Kubernetes (k8s) クラスタをUbuntu Server 26.04で構築。
MicroK8sで小規模構成から始め、フルKubernetesへ段階的に拡張可能。

【CI/CDパイプライン】
GitLab Runner、Jenkins、GitHub Actionsのself-hostedランナーとして活用。
Rust化されたシステムコンポーネントで、ビルドプロセス自体の安全性も向上。

ケース3:データサイエンティスト・研究者

最適な理由:

  • GPU(NVIDIA/AMD)のネイティブサポートで計算処理が高速
  • Jupyter Notebook、RStudio、MATLAB等の科学計算ツールが豊富
  • Python(NumPy、Pandas、SciPy)のパッケージ管理が容易
  • 大容量データ処理でもメモリー安全なRust実装が裏で支える

具体的な利用シーン:

【バイオインフォマティクス】
ゲノム配列解析にBLAST、Bowtie等のツールを使用。
マルチGPUでディープラーニングによるタンパク質構造予測(AlphaFold等)。

【金融データ分析】
Pythonのpandasで大規模時系列データを処理。
amd64v3最適化パッケージで、統計計算が従来比20%高速化。

【気象シミュレーション】
Fortran/C++の数値計算コードをコンパイル。
MPIによる並列計算で、複数ノードを活用した大規模シミュレーション。

ケース4:組み込み・IoTエンジニア

最適な理由:

  • Raspberry Pi、Jetson Nanoなど組み込みボードの公式サポート
  • クロスコンパイル環境の構築が標準ツールで可能
  • リアルタイムカーネル(PREEMPT_RT)パッチの適用実績
  • ROS(Robot Operating System)の標準プラットフォーム

具体的な利用シーン:

【産業用ロボット制御】
ROS 2 Humble/Jazzy環境で、ロボットアームの制御システムを開発。
リアルタイム性が必要な部分はC++/Rust、ロジック部分はPythonで実装。

【IoTゲートウェイ】
Raspberry Pi 5 + Ubuntu Server 26.04で、センサーデータを収集・処理。
MQTTでクラウドに送信、エッジAIで異常検知。

【ドローン制御】
PX4 Autopilot + ROS 2の開発環境。
Gazeboシミュレータで飛行テスト後、実機(Jetson Orin)にデプロイ。

ケース5:教育機関・学習者

最適な理由:

  • 完全無料で、学生も教育機関も費用負担なし
  • 日本語ドキュメントとコミュニティが充実
  • プログラミング学習に必要なツールが最初から揃っている
  • 古いPCでも軽量なフレーバー(Xubuntu、Lubuntu)で再利用可能

具体的な利用シーン:

【プログラミング授業】
Python、Java、C言語の学習環境を一括セットアップ。
VS Code、PyCharm(Community版)で統合開発環境を構築。

【情報セキュリティ実習】
Wiresharkでパケット解析、Metasploitableで脆弱性診断の実習。
TPM暗号化やPQCの最新技術を、実際に動かして学べる。

【サーバー構築実習】
VirtualBox上にUbuntu Serverをインストール。
LAMP環境構築、DNS/DHCPサーバー設定など、実践的なスキルを習得。

ケース6:一般ユーザー・デスクトップ用途

最適な理由:

  • Windows/macOSからの移行が容易(UIが洗練)
  • ウイルス・マルウェアのリスクが極めて低い
  • LibreOffice、Firefox、Thunderbird等が標準インストール
  • プライバシー保護(広告トラッキングなし、テレメトリー最小限)

具体的な利用シーン:

【日常のPC作業】
ブラウジング、メール、文書作成(LibreOffice)、動画視聴。
FlatpakでSpotify、Zoom、MS Teams等も簡単にインストール。

【古いPCの再利用】
2015年製のノートPCにUbuntu 26.04をインストール。
Windows 11非対応だったPCが、軽快に動作する現役マシンに復活。

【プライバシー重視の利用】
VPN(WireGuard等)と組み合わせ、安全なブラウジング環境を構築。
TPM暗号化で、PCを紛失しても情報漏洩の心配なし。

まとめ:一貫性と革新の融合

Ubuntu 26.04 LTS(Resolute Raccoon)は、表面上はこれまでのUbuntuと同じ「親しみやすさ」を維持しています。しかし、その内側ではRustへの移行、X11との決別、次世代暗号の導入という、OSの歴史に残る革命が起きています。

「劇的な変化でユーザーを戸惑わせることなく、圧倒的な安心感を提供する」——この哲学を貫いた26.04は、ビジネス、サーバー、そしてAI開発において、最も信頼できるOSとなるでしょう。

長年、組み込みシステムやロボット開発でLinuxを使ってきた立場から見ても、今回のアップデートは非常に理にかなっています。セキュリティは「後付け」ではなく「設計の中核」に置かれるべきです。26.04は、その理想を現実のものとした、エンジニアに最適なOSと言えるでしょう。

特に、これから組み込みLinux開発を始める方、産業用途でのLinux採用を検討している方にとって、26.04は「長期的に安心して使える基盤」として最適な選択肢になるはずです。


ファクトチェック済み主要スペック

項目 内容
正式名称 Ubuntu 26.04 LTS
コードネーム Resolute Raccoon(決意したアライグマ)
リリース予定日 2026年4月24日(木)
サポート期間 5年間(無料)/ 10年間(Ubuntu Pro登録)
カーネル Linux Kernel 6.13系(予定)
デスクトップ GNOME 50(Wayland専用)
主要セキュリティ機能 sudo-rs導入、TPM 2.0 FDE、PQC対応、Snap権限管理
パッケージ管理 統合App Store(DEB/Snap/Flatpak)
AI開発サポート ROCmネイティブ提供、CUDA 12.x対応
最適化オプション amd64v3パッケージ提供

リリーススケジュール

  • 2026年2月:Feature Freeze(機能凍結)
  • 2026年3月:Beta Release(ベータ版)
  • 2026年4月上旬:Release Candidate(候補版)
  • 2026年4月24日:正式リリース予定

現在はまだ開発版(Daily Builds)の段階ですが、主要機能はほぼ固まっており、今後はバグ修正と安定化作業が中心となります。


参考リンク


※本記事の情報は2026年2月7日時点のものです。正式リリースまでに仕様が変更される可能性があります。